数ある仮想通貨の中でも異彩を放つ「イーサリアム(ETH)」。イーサリアムにより、Dapps、Defi、NFT、ブロックチェーンゲーム、そしてDAOなど、それまで存在しなかった数々の概念やビジネスが生まれ、仮想通貨市場は空前の活気を帯びるに至りました。
今後、イーサリアム関連プロジェクトがどのような発展を遂げていくのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、仮想通貨を語る上で欠かせない「イーサリアム」とはどんなプロジェクトなのか、イーサリアムと切っても切り離せないNFT・メタバースの将来性やリスクなどについて解説します。
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イーサリアムとは?
イーサリアムとは、ロシア系カナダ人のプログラマーであるヴィタリック・ブテリン氏によって開発された分散型アプリケーションやスマート・コントラクトを構築するためのブロックチェーン・プラットフォームです。このプラットフォーム内で使用される仮想通貨(暗号資産)はイーサ(ETH)と呼ばれます。
こちらの記事でイーサリアムなどブロックチェーンの活用方法、仕組みについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
イーサリアムの時価総額は、数ある仮想通貨(暗号資産)の中でビットコインに次ぐ第2位です。その人気は、仮想通貨の草分けであるビットコインとは似て非なるイーサリアム特有の機能や訴求ポイントに裏付けられています。
そこでまず、イーサリアムはどのような仮想通貨なのか、ビットコインとの違いはどこにあるのか、について見ていきましょう。加えてイーサリアムならではの課題もあり、その解決に向けての現実的な動きやイーサリアムキラーと呼ばれる対抗勢力についても解説します。
ビットコインとの大きな違い
仮想通貨の先駆けとなったのがビットコインで、その登場は2009年でした。管理者のいないブロックチェーン上でトークンの売買ができ、決済にも利用可能です。現在は投資・資産保全目的での取引が主となっています。
こちらの記事でイーサリアムの先駆けとなったビットコインの仕組みについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
一方、ビットコインに遅れること約4年、2013年に登場したのがイーサリアムです。イーサリアムがビットコインと大きく違うのは、売買や決済に用いる目的に加えて、ブロックチェーン上で様々なアプリケーションを作成して稼働できる機能になります。
アプリケーションの作成と稼働を可能にしているのが「スマートコントラクト」です。イーサリアムでは、主にSolidityという開発言語によってあらかじめプログラムされた契約を検証可能な形で自動実行できます。
こちらの記事でイーサリアムの主要機能であるスマートコントラクトの仕組みについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
イーサリアムにより、中央集権的な管理体制に頼らずにブロックチェーン上であらゆる機能を実行できる以下のような分散型アプリケーション(Dapps)サービスが次々と誕生します。
主なDAppsの種類 | 概要 |
---|---|
NFT | デジタルコンテンツの唯一無二性を証明できる非代替性トークン 関連記事:NFTの仕組みとユースケース |
分散型金融(DeFi) | 送金、決済、融資、保険といった様々な金融サービスが提供できる 関連記事:DeFiの仕組みと将来性 DeFiの取引所であるDEXの仕組み、CEXとの違いについてはこちらについて詳しく解説しています。 |
ゲーム | ブロックチェーンゲーム内でNFTアイテムやメタバースの土地を売買するGameFiが誕生 |
こちらの記事でイーサリアムが可能にしたDAppsの仕組みと事例について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
とりわけ2021年に入った頃からNFT人気に火がつき、2017年頃まではわずか1,000円程度だったイーサリアムが、2021年11月には50万円を突破するという、天文学的な高騰ぶりを見せました。
その牽引役となったのが、ブロックチェーンゲームや、そのゲーム内のキャラクターやアイテムをNFT化したコンテンツ、さらに、人気アーティストやスポーツ選手、ブランド品などの画像や動画、デジタルアイテムをNFTにして売買可能にしたブロックチェーンプラットフォームです。
スケーラビリティ問題とは
スケーラビリティ問題とは、イーサリアムを使った取引が増えるにつれ、各トランザクションの処理にかかる時間が長引き、手数料(ガス代)が極端に高騰する問題です。手数料はマイナー、つまり取引承認の計算処理を行う人に支払われます。
イーサリアムのスケーラビリティ問題によって、取引に参加できるのが資金に余裕のある企業や富裕層に限られてしまうことで批判の的となりました。
スケーラビリティ問題を解決することが、開発者たちの何よりの優先課題となっています。これを放置すれば、他のプラットフォームに顧客を奪われかねません。
このソリューションとして、イーサリアム開発チームは、大型アップデートを何度も繰り返しています。
近年、スケーラビリティ問題を解決すべく、イーサリアムを基にしていて互換性が高く、処理スピードも速くてガス代が安価な「ポリゴン」(Polygon)に代表されるレイヤー2と言われるブロックチェーンも開発されています。
こちらの記事でイーサリアムのレイヤー2 Polygonの成り立ちや仕組みについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
イーサリアムキラーとは?
イーサリアム、およびレイヤー2に対抗するようにして、スマートコントラクトを有する他の仮想通貨が複数登場しました。それらは「イーサリアムキラー」と呼ばれ、「ソラナ」「アバランチ」「ポルカドット」「カルダノ」などがよく知られています。独自のコンセンサスメカニズムにより、イーサリアムと比べて格段に速い処理速度をもつうえにガス代も安いので、イーサリアムの存在を脅かしかねない新勢力として注目されています。
つまり、スマートコントラクトをめぐる市場環境は、「『イーサリアムとそのレイヤー2』vs『イーサリアムキラー』」という勢力図で構成されているといってよいでしょう。
こちらの記事で主要イーサリアムキラーの1つポルカドットの特徴、将来性を期待できる理由について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
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イーサリアムがもたらしたNFT・メタバース需要
イーサリアムの知名度と人気を上げたきっかけがNFTです。とりわけ、2021年3月にNFTによるデジタルアートが約75億円で落札されたことは、世界に大きな衝撃を与えました。
これを皮切りにNFT人気、そしてNFTの売買に使用されるイーサリアムの需要がペアのように高騰していきます。消費者庁の統計によると2021年の世界におけるNFT取引額は176.9億ドルに達し、2020年と比べて215倍という急増ぶりでした。
Facebookはメタに社名変更してメタバースがトレンドに
2021年10月、イーサリアムが市場最高値をマークすると、ほぼ同じタイミングでFacebookが社名をメタバースにちなんだ「メタ」に変更しました。
メタバースと呼ばれる仮想空間内でアバターとなってレジャーやショッピングを楽しみ、バーチャル空間でNFTを売買したり、アバターに着せたりする世界観が瞬く間にトレンド入りしました。
メタバース・NFTをゲームに組み込んだGameFiの登場
『The Sandbox』や『Decentraland』(ディセントラランド)といったブロックチェーンベースのメタバースゲームは、GameFiの象徴とも言える存在です。これらのゲームでは、仮想空間内の土地や建物をNFTにして売買したり、ステーキングできたりします。
そのため、エンタメと収益性の両立を可能にする「GameFi(ゲームファイ)」という言葉を生み出しました。
こうした動きが、中央集権的存在を抜きにした分散型メカニズムが特徴であるWeb3を一気に推し進めたのです。このプロセスにおいてイーサリアムの存在は不可欠で、さらなる関連プロジェクトへの期待が高まっている現状です。
イーサリアムの将来性が高い理由
イーサリアムによって創出された分散型システムのメカニズムは、NFTやブロックチェーンゲームだけではありません。以下の理由から、将来に向けて予想できないほどの特筆すべきポテンシャルを秘めています。
- DeFiへの期待値が高い
- DAOによってあらゆる組織の運営を公正透明に
イーサリアムの将来性が高い理由について掘り下げましょう。
DeFiへの期待値が高い
DeFiとは、中央集権的な管理者を必要としないブロックチェーンを基にした金融サービスです。イーサリアムのスマートコントラクトを利用すれば、あらゆる金融業務が分散化され、銀行や証券会社を介さずとも24時間・365日検証可能な形で取引を自動実行できます。
日本総研の調べでは、2021年末の市場規模が約11兆円で、2020年の約10倍に増加しています。ブロックチェーンのみで運営するため、取引スピードが速く、手数料も安価で済みます。口座をもつ必要もないので、身分証明も与信審査も省略可能です。
DeFiにより、世界で25億人ともいわれる既存の金融機関で口座を持てない人たちにも金融サービスを提供できるチャンスが広がるでしょう。DeFi市場が活気づけば、それにともなってイーサ需要も確実に高まるに違いありません。
イーサリアムの存在感や信頼性はさらに高まることになるでしょう。
DAOによってあらゆる組織の運営を公正透明に
DAOとは、特定の所有者や管理者が存在せずとも、ブロックチェーンで管理・運営される組織です。イーサリアムのスマートコントラクトによって契約や取引、権利関係の構築などを自動実行できるのが特徴です。
すべての議決や取引はブロックチェーン上に記録されるため、透明性、安全性、非改ざん性に富んでいるうえ誰でも参加可能です。すでに様々な仮想通貨プロジェクトの資金調達に活用され、莫大な資金を集めています。
企業や役所、専門家やファンによって構成されるコミュニティやチャリティ組織といったあらゆる組織でDAOが導入されれば、契約や仕事の割り振り、重要案件の議決も全て自動実行されます。上司、部下、取引先間の人間関係の煩わしさから解放されますし、透明かつ公正な組織の運営が可能になると考えられます。
こちらの記事でDAOの活用例、仕組みについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
ETF上場の可能性がある
アメリカで、2021年にビットコインの先物ETF(投資信託)が正式に承認されたことを受けて、イーサリアムのETFの登場も期待されています。
ETFでもイーサリアムを活用できるとなると、投資の幅が大きく拡大し、幅広い層の資金がイーサリアムへ流入するでしょう。さらなるイーサリアムへの資産流入、および価値向上が見込まれるでしょう。
大企業と連携している
イーサリアムの活用を後押しする目的のイーサリアム企業連合(EEA)という組織があり、世界中の名だたる500社以上の大企業が名を連ねています。例えば以下のような誰もが知る大企業です。
- トヨタ
- 三菱UFJ銀行
- KDDI
- マイクロソフト
- インテル
- JPモルガン
など
大企業のバックアップを受けてイーサリアムの信用力を高める大きな効果があるでしょう。
新規レイヤー2プロジェクトの登場
イーサリアムを補完するレイヤー2プロジェクトは、日を追うごとに増加しています。Polygonに加え、Arbitrum、Optimism、dYdXなど目的や用途を特化したプロジェクトが次々に登場しています。
新たなプロジェクトは、既存のプラットフォームより価値や魅力のあるプロジェクトに裏打ちされているケースが多いので、総合的にイーサリアムの将来性を高めると期待できるでしょう。
実効性の高い大型アップデートを控えている
イーサリアムでは、過去に何度もアップデートを繰り返しており、その度に有用性と信頼性を増しています。2022年9月には待望の「The Merge」が実施されました。
The Mergeにより、イーサリアムがリリースされてから約7年をかけて段階的に行われてきた検証システムの「PoW(プルーフオブワーク)」から「PoS(プルーフオブステーク)」への変更がいよいよ最終段階を迎えました。膨大な手間と資金、そして環境への負荷がかかる従来のPoWから変わったのです。
PoSへの変更によりマイニング報酬が「−90%」と大幅に削減されたため、ガス代が大変安くなりました。
こちらの記事で最近PoSがなぜ採用されているか詳しく解説していますので併せてご覧ください。
さらに開発チームは、2023年以降、近い将来にネットワークを新たに64に分割し、負荷を分散させる「シャーディング」も計画しています。これが叶えば、取引処理にかかる時間が大幅に短縮されるでしょう。スケーラビリティ問題解決という目標に、さらに大きく近づくことになるのです。
これでも開発チームが意図するシステムの完成には至らず、大型アップデートは今後もさらに繰り返されていく予定です。それにともなってイーサリアムの市場価値も上昇すると期待してよいでしょう。
有識者はイーサリアムの今後価格上昇を予想
2022年はイーサリアムだけでなく仮想通貨市場全体が低迷していますが、これらはイーサリアムの本質的な価値が下がったことを意味するわけではありません。イーサリアムに対する期待値は他の仮想通貨よりも高いと言えるでしょう。
その証拠に一部の有識者やAIの予想では、2024年以降から2030年にかけて、イーサリアムの価格がほぼ右肩上がりで上昇していくとされています。
上記画像のようにイーサリアムが以下のように着実に価格上昇することが予測されています。2034年には、現状価格の倍以上である4700ドルが予想されているのは、イーサリアムの本質的な価値が高い証拠ではないでしょうか。
米価格予想サイト「Digitalcoin」ではイーサリアムの今後についてさらに強気で、2025年平均で5000ドルに達すると予想されています。以下のように予想されています。
DeFiやdAppsなどの急速な成長が期待されていることから、イーサリアムの価格上昇の要因になると予想しているのです。
既にイーサリアムのエコシステムは盤石
仮想通貨市場においてイーサリアム特有の概念やサービスを数多く創出した実績は高く評価されています。スマートコントラクトに裏打ちされたイーサリアムのエコシステムは、メインストリームとしての確固たる価値と存在感を築いてきました。
現に非金融分野においても、P2P(ピア・ツー・ピア)による電力取引やIoTと連携したP2Pシェアリングエコノミーなど、様々な用途が実現しようとしています。イーサリアムキラーの目覚ましい台頭があるといっても、スマートコントラクトの生みの親ともいえるイーサリアムの牙城は易々と侵されるものではありません。
サステナブルな関連プロジェクトにより伸び代は無限大
イーサリアムに対しては、サステナビリティ(持続可能性)的側面から大きく期待を寄せられている点も注目に値します。
例えば、ファストファッションの台頭により世界中で衣料品の大量廃棄が深刻化しています。売れ残りだけでなく、原料生産時、縫製時、さらに使用後も含めると、その量は世界で9,200万トンにも及び、なお拡大傾向が止まらない状況です。
これに一石を投じると期待されているのが、有名ファッションブランドによるバーチャル空間でのNFTアイテム提供サービスです。現実世界で不要なファッションアイテムの価値をバーチャルで代替し、顧客エンゲージメントとサステナビリティ、さらに収益性を3つ同時に叶えようという考え方です。
先進国を中心に持続可能性への関心と評価基準は高まる一方です。そこにイーサリアム関連プロジェクトが評価対象として上手くはまれば、その伸び代は計り知れないものがあります。
イーサリアムでよくある質問
- イーサリアムとは?
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メタバースエンジニアとは、コンピュータ中に構築された3次元の仮想空間であるメタバースに関する開発や設計を行うエンジニアです。現在のメタバース市場の拡大に伴って企業の人材争奪戦が始まっています。詳しくはこちらにジャンプ。
- イーサリアムとビットコインの違いは?
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仮想通貨の先駆けとなったのがビットコインで、その登場は2009年でした。管理者のいないブロックチェーン上でトークンの売買ができ、決済にも利用可能です。現在は投資・資産保全目的での取引が主となっています。一方、イーサリアムがビットコインと大きく違うのは、売買や決済に用いる目的に加えて、ブロックチェーン上で様々なアプリケーションを作成して稼働できる機能になります。アプリケーションの作成と稼働を可能にしているのが「スマートコントラクト」です。詳しくは「イーサリアムとビットコインの違いは?」にジャンプ。
まとめ
イーサリアムとその関連プロジェクトには、市場からも大きな期待が寄せられています。イーサリアムには、それに応えうるだけの実績とメカニズム、さらに技術的裏付けがあります。
ビットコインが持てていない拡張性と、既に世界で獲得しているシェアはプロジェクトとしてますます伸びていくエンジンとなるでしょう。さらなる大型アップデートを控え、くわえて一般社会でもブロックチェーンが本格的に注目され始めた今こそがイーサリアム関連業界でキャリアを築き始める絶好のチャンスかもしれません。
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