仮想通貨(暗号資産)第一号の「ビットコイン」は、時価総額、人気ともに全仮想通貨の中で断然トップに位置しています。Web3の主役となるブロックチェーンを世に広めたのもビットコインです。
そんなビットコインですが、誰が、いつ、何のために作り出し、どのような仕組みで取引されているのか、と訊かれるとよくわからない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ビットコインの基礎知識や仕組み、メリット・デメリット、さらに今後について詳しく解説します。
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ビットコインとは?
ビットコインは、ブロックチェーンを基盤とした史上初のデジタル通貨です。ビット「コイン」と呼ばれますが、物理的に触れることのできる「コイン(通貨)」ではありません。基本的にネット上でのみ使用可能の通貨です。
日本円や米ドルなどの法定通貨のように国家によって価値の裏付けがなされていない意味で「仮想」通貨と呼ばれます。通貨単位はBTCです。
ビットコインを稼働させているのは、「ブロックチェーン」理論です。ブロックチェーンも上記論文の中でサトシ・ナカモトが誕生させた概念です。ビットコイン以降、数万ともいわれる仮想通貨が誕生しますが、そのすべてがブロックチェーン理論で稼働しています。
こちらの記事でビットコインが世界に紹介したブロックチェーンの仕組みについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
開発者サトシ・ナカモトは正体不明
ビットコインは2008年11月、サトシ・ナカモトの名義でインターネット上に発表された「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」という論文から生まれました。
上記の論文が発表された3ヶ月後には、サトシ・ナカモト自らが実装したとされるプログラムがネット上で稼働し始めます。これがビットコインが正式に誕生した瞬間です。ただ2010年半ば頃にサトシ・ナカモトの存在が忽然となくなり、その後は有志からなるコミュニティがプロジェクトを引き継ぎ、繰り返し改良を重ねながら現在にいたります。
創始者のサトシ・ナカモトや、開発を引き継いだコミュニティを含めて、ビットコインは発行主体・管理主体が存在せず、コンピューターのネットワークを利用して管理されています。
ビットコインでできること
ビットコインを使うと、以下のようなことができます。
機能 | 概要 |
---|---|
送金 | 個人間でスピーディで安価な送金が可能 |
決済 | 一部の実店舗やネットストアで決済手段として使用可能 |
価値の保全 | 法定通貨や金を代替する資産の保全手段として活用 |
公共料金支払い | 一部の限られた仮想通貨取引所を利用すると電気・ガス料金などの公共料金が支払える |
寄付 | ブロックチェーン技術によって誰がどこに寄付したかが明瞭になるため透明性の高い寄付が可能 |
上記のうち、送金や決済については後続のブロックチェーンであるイーサリアムやリップルの方が機能的には優れている部分も少なくありません。それでも、仮想通貨のゴールドとも例えられる価値保全機能については、他ブロックチェーンの追随を許しません。
こちらの記事でビットコインの後を追って登場したイーサリアムの仕組みについて詳しく解説しています。
こちらでリップル(XRP)の仕組みについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
ビットコインの仕組み7ポイント
ビットコインの仕組みについて、以下の視点から詳しく解説しましょう。
- ブロックチェーンで取引する
- ハッシュ値の仕組みでデータ改ざん不能
- マイニングによる承認
- マイナーが計算を行う
- マイナーへの報酬は新しいBTC
- 発行枚数の上限
- 半減期
それぞれのポイントについて説明します。
ブロックチェーンで取引する
ブロックチェーンは分散型台帳と呼ばれ、プロジェクトに参加しているすべてのノードがP2P方式によって1対1でつながります。企業や銀行のような中央集権的な管理者不在で取引や送金ができます。
取引データを格納するサーバが存在するのではなく、すべてのノード(ユーザーのPC)にサーバが分散されているのです。
ビットコインでは、約10分ごとに発生したトランザクション(「取引」の意)を集めてブロックを作り、データベースに登録します。そのブロック内には、そのすぐ前に作成されたブロックのハッシュ値が格納されています。
隣り合わせたブロックが鎖(チェーン)のようにつながって記録されていくので「ブロックチェーン」と呼ばれます。
ハッシュ値の仕組みでデータ改ざん不能
ハッシュ値とは、ハッシュ関数によって出力される固定の桁数をもつ値です。ハッシュ関数に入力されたデータが同じであれば常に同じハッシュ値が出力されます。しかしハッシュ値からはハッシュ関数に入力したデータを逆算できません。
もし、悪意ある第三者がデータを改ざんしようとしても、ブロック全体のハッシュ値が変わり、後続のブロック内に含まれるハッシュ値と整合しなくなります。これにより不正が明らかとなる仕組みです。
このハッシュ関数のメカニズムが、ブロックチェーンの堅牢性や信頼性を保証しているといってよいでしょう。
マイニングによる承認
トランザクションを集めて定期的にブロックを作成する作業を「マイニング」といいます。つまりマイニングによって、すべての取引データがブロックチェーンに記録されるのです。
マイニングは、最新ブロックのハッシュ値を出力するためにハッシュ関数に入力された値(ナンス)を膨大な計算により見つける作業です。この複雑な計算によって、取引の正当性を証明する合意形成アルゴリズムを「PoW(プルーフオブワーク)」といいます。
こちらの記事でPoWとPoSの違いを詳しく解説していますので併せてご覧ください。
マイナーが計算を行う
マイニングの計算を行うのが「マイナー(採掘者」といわれる存在です。
ナンスはハッシュ値から逆算できません。ですから、マイナーは総当たり形式で見つけ出す必要があります。
この答え探しは、マイナーのマイニング能力を考慮して、あえて約10分程かかるような難度に設定されています。そして、最初に解答を導き出したマイナーにブロック生成の権利が与えられます。
マイナーへの報酬は新しいBTC
サトシ・ナカモトが考えたのが、マイニングに成功したものにビットコインを新たに生成して報酬として与えることです。ブロック生成者には新たに発行したビットコインに加え、各トランザクションの際に発生する手数料も報酬として付与することにしました。
マイニングには膨大な計算に耐えるだけの高性能かつ高額なコンピューターが必要で、誰もが容易に行えるものではありません。よって、そこに何らかのインセンティブがなければ誰も複雑で面倒なマイニングに参加しようとは思わないでしょう。
現在では、マイニングは経済的にも物理的にも一個人が行えるほど容易くはないため、ほとんどのマイナーは企業です。
発行枚数の上限
ビットコインの発行枚数は2,100万BTCと決められており、変更されることはありません。ビットコインに限らず、多くの仮想通貨は発行枚数が限定されています。
その理由は、発行枚数に上限がなければ通貨の希少性がなくなってしまう、つまり価値を保証できないからです。
上限なく発行される法定通貨と異なり、ビットコインは一定の価値を保持できるとされているため、資産の保全機能として期待されています。
半減期
半減される年 | 報酬額(BTC) | 総発行数(BTC) |
---|---|---|
2009年 | 50 | 1,050万 |
2012年 | 25 | 1575万 |
2016年 | 12.5 | 1837.5万 |
2020年 | 6.25 | 1968.75万 |
2024年(予想) | 3.125 | 1991.375万 |
2140年頃(予想) | 0 | 2,100万 |
マイナーに報酬として支払われる新規発行されるビットコインは、21万ブロック作られるごとに半減するルールになっています。
ビットコインが誕生した2009年の報酬はブロックを「50BTC」からのスタートでした。約10分で新規作成されるブロックを21万ブロック作成するのに、約4年半かかります。つまり、4年半ごとに「半減期」が訪れる計算となります。
1回のブロック生成に50BTC発行するところからスタートです。まず最初の半減期までに「50BTC×21万=1,050万BTC」発行されました。
その後上記の表のように半減期が約4年半ごとに訪れています。最終的には2140年頃に2,100万BTCがすべて採掘(発行)されると予想されています。
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ビットコイン5つのメリット
ビットコインには以下のメリットがあります。
- 中央管理者がいない
- 断トツのシェアを誇る
- 多くのサービスで取り扱われている
- 大企業が参入している
- 手数料が無料または安価
それぞれについて解説しましょう。
中央管理者がいない
ビットコインの取引は、法定通貨のように銀行のような中央管理者を必要としません。金融機関に預けるとその用途や保管状況について外部からよく見えないため、ただ信用するしかありませんでした。
ビットコインは、公開台帳であるブロックチェーンにすべての取引が記録されています。この透明性により、不正取引や不正アクティビティを監視し、不正行為を防止できます。
すべて個人間での直接取引となるため、従来の銀行送金よりもコストが低くなる傾向があります。しかも銀行経由なら数日かかる送金が早ければ10分前後で完了します。
断トツのシェアを誇る
ビットコインのシェアは全仮想通貨の中でも突出しています。全仮想通貨の中で40%を超えるシェアを占めています。
仮想通貨の大手情報サイト「コイン・マーケット・キャップ」によると、2023年2月時点のビットコイン時価総額は約61兆円で、2位のイーサリアム(約27兆円)に倍以上の差をつける1位です。
この数年は時価総額、価格ともに1位がビットコインで2位がイーサリアム(ETH)というランキングに変化はありません。価格でも、イーサリアムの10〜15倍という高値を維持しています。
法定通貨として扱う国も出てきている
中米のエルサルバドルでは、2021年よりビットコインが正式な法定通貨として認められました。もともと米ドルが法定通貨でしたが、ここにビットコインも加わったかたちです。
ビットコインは、送金、決済、公共料金の支払い、寄付といったさまざまなサービスで活用されています。
大企業が参入している
ビットコインを使った決済や送金のサービスを提供する大企業が増えている点も注目すべきメリットです。国内では、大手家電量販店・ビックカメラで一定限度額までをビットコインで支払えます。
海外では、ペイパルやコカ・コーラ、エミレーツ航空、マスターカードなどがビットコインでの決済を受け入れ、スターバックスでもビットコインと連携できるアプリが導入されました。
手数料が無料または安価
ビットコインは、購入時や売却時、送金時の手数料が従来の法定通貨に比べて格安です。中央管理者が不在のため、取引所によっては手数料が無料の場合もあり、必要な場合でも数百円程度という安価で済むことがほとんどです。
ビットコイン3つのデメリット
ビットコインのデメリットは、主に以下の3点です。
- 価格変動が大きい
- 環境負荷がかかる
- セキュリティ面のリスクがある
それぞれについて解説しましょう。
価格変動が大きい
ビットコインはまだ投機性が非常に高く、様々な要因から価格が乱高下することが珍しくありません。
現に、2021年には一時、777万円まで高騰しました。しかし、新型コロナウイルスの流行、米国の大幅利上げ、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響から、2022年には一時200万円台にまで暴落しました。
ビットコインは仮想通貨の代名詞的存在のため、市場にポジティブな動きがある時にはいち早く価格が上がりますが、ネガティブな動きにも極めて敏感に反応する傾向が強いのです。
環境に負荷がかかる
ビットコインのマイニングには、膨大な電力が必要です。ビットコインの需要が上昇すると、その電力需要も増加します。
ケンブリッジ大学のビットコイン電力消費指数(CBECI)によると、、2023年のマイニングによる予想消費電力は117テラワット(毎時)で、オランダの消費電力とほぼ同じ水準です。
その多くは、石油や天然ガスなどの化石燃料を利用していると指摘されており、二酸化炭素排出量を大幅に増加させ、地球環境に悪影響を及ぼすと非難の的となっています。
セキュリティ面のリスク
ビットコインを扱う仮想通貨取引所を狙ったハッキング事件が後を絶ちません。大きな事件では被害額が数百億円にものぼるケースが複数あり、預けていたビットコインがすべて消失したユーザーも少なくありません。
ビットコインをはじめ仮想通貨は法定通貨に比べると法整備が遅れているため、盗難被害が生じても補償されるとは限らない点が高リスクといえるでしょう。
ビットコインの今後
ビットコインは、4年半ごとの半減期を迎えるとその翌年には価格が高騰するという流れを繰り返してきました。そう考えると、次に予想されている2024年の半減期後には価格上昇が期待できるでしょう。
他にも、技術アップデートや現物ETFへの期待によってビットコインの将来性は高いと言えるでしょう。
ニーズに合ったアップデート継続中
ビットコインは、数年に一度アップデートが繰り返されており、取引が遅延するスケーラビリティ問題の解消が進みつつあります。とりわけ「ライトニングネットワーク」は、メインチェーンではなくレイヤー2で取引の一部を処理するため、遅延の緩和を可能にしています。
これらのアップデートによって、より多くのユーザーにとってビットコインのユーザビリティが確実に上昇しているといってよいでしょう。
ビットコイン現物ETFの期待
2021年10月にビットコイン先物ETF(上場投資信託)がニューヨーク証券取引所に初上場すると、その翌年にビットコイン価格が777万円の最高値をつけました。
先物に加えて現物ETFがSEC(米国証券取引委員会)で承認されれば、さらにビットコイン価格が安定して上昇すると期待できます。
ビットコインでよくある質問まとめ
- ビットコインとは?
-
ビットコインは、ブロックチェーンを基盤とした史上初のデジタル通貨です。ビット「コイン」と呼ばれますが、物理的に触れることのできる「コイン(通貨)」ではありません。基本的にネット上でのみ使用可能の通貨です。日本円や米ドルなどの法定通貨のように国家によって価値の裏付けがなされていない意味で「仮想」通貨と呼ばれます。通貨単位はBTCです。詳しくはこちらにジャンプ。
まとめ
ビットコインは仮想通貨の代名詞ともいえる存在で、圧倒的知名度と人気を誇ります。2022年以降、仮想通貨市場は大幅な低迷を見せていますが、それでもビットコインには一定の需要と信頼が根強く残っています。
2024年に半減期を迎え、局面が変われば大きく価値が見直される可能性は十分にあるでしょう。むしろ仮想通貨関連業界で仕事を探すなら今がチャンスでしょう。
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