近年、急速に存在感を増しているブロックチェーン上で稼働するアプリケーション「DApps(ダップス)」。
その名前こそ一般的にはあまり知られていないかもしれませんが、実はさまざまなDAppsが世の中にはあります。比較的小規模な事業体であっても、世界中に広がるネットワークサービスを比較的簡単に構築できます。
そこで本記事では、DAppsの仕組みやメリット・デメリット、将来性などについて解説します。
DAppsへの理解が深まれば、ブロックチェーンや今後のWeb3業界の将来性についても知見が広がります。ビジネスチャンスの拡大や、ITエンジニアの方のキャリアアップのベースとなるでしょう。
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DAppsとは?
DAppsは、「Decentralized Application」の略で、ブロックチェーン技術の上に成り立つ「分散型アプリケーション」を意味します。「分散型」であり、政府や自治体・サービス企業・ベンダーといった中央集権的管理者を必要としません。
こちらの記事でDAppsを生み出したブロックチェーンの活用方法、仕組みについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
たとえばYouTubeで動画を閲覧したりAmazonで商品を売り買いする際には、必ずサービスを提供しているプラットフォーマー(GoogleやAmazon)に個人データを提供したり、手数料を支払わなければなりません。ところがDAppsは管理者不在のため、その必要がないという特徴があります。
ユーザーやノードがサーバーの役割を持って、一対一(ピアツーピア=P2P)で繋がる概念が基となっています。つまりDAppsは、人や企業が仲介せずともブロックチェーン上でさまざまな機能やユーザー間の取引を自動実行できるツールを指します。
DAppsの開発、及び運用を行うにあたって必要となる「スマートコントラクト」と開発言語について、さらに詳しく説明します。
スマートコントラクト
DAppsの稼働を可能にしているのは「スマートコントラクト」です。スマートコントラクトとは、仮想通貨の中でビットコインに次ぐナンバー2の時価総額を誇るイーサリアムを代表としたブロックチェーン上で、あらかじめプログラムされた通りに契約を自動実行できるプロトコルのことです。
スマートコントラクトにより、ビットコインのような送金と決済への活用に加えて、以下のような複雑で経済的、社会的に利便性の高いサービスをブロックチェーン上で開発可能となります。
- 融資
- 保険・証券・不動産の取引
- デジタルコンテンツへの所有権の付与や売買取引
- ゲームの実装
こちらの記事でDAppsに欠かせないスマートコントラクトの仕組みについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
DAppsの代表格はイーサリアムベースですが、最近はさまざまなブロックチェーン上で開発がおこなわれています。
こちらの記事でDAppsを世界に紹介したイーサリアムの仕組みについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
開発言語の主流はSolidity
スマートコントラクトは、主にSolidityという開発言語で実装されます。Solidityは、文法がJavascriptに似た高級言語で「solc」というコンパイラでコンパイルされたバイトコードをEVM(イーサリアム仮想マシーン)を通じて実行します。
Solidityを使えば、例えば「仮想通貨Aが100単位入金されたら180日後に1%の利子を付けて返金する」といったコントラクト(契約)をプログラムしてブロックチェーン上に書き込むことができるのです。実際に仮想通貨Aが入金されて条件が実現すると、プログラム通りに自動返金されます。
ある目的のために実施したいことや、課題を解決するべく実行したい内容をSolidityでスマートコントラクトとしてプログラミングできるのがDAppsです。日頃スマートフォンを使って活用しているアプリと全く同じように使用できます。
ただし、DAppsが大きく異なるのは、そこにアプリを提供する企業やベンダーといった人を中心とする管理者を必要としないことです。ですから、中小企業や個人であっても、比較的シンプルなステップでスマートコントラクトを実行できます。
こちらの記事でDApps実装に欠かせないSolidityについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
ビットコインはDApps機能を持っていない?
ブロックチェーンの開発時期や開発目的によっては、DApps機能を持っていないブロックチェーンも存在します。例えば、ビットコインはDAppsを実行するために必要な機能を持っていません。
ビットコインは初期のブロックチェーン技術であり、デジタル通貨としての機能に特化しているため、DApps機能を持っていません。ブロックチェーン上の取引の記録や価値を保存することに主眼を置いています。
こちらの記事でビットコインの仕組みとメリット、今後の見通しについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
Ripple(リップル)は理論的にはDAppsの開発も可能ですが、あまり一般的ではありません。Rippleは金融機関向けのブロックチェーン技術で、国際送金や資産の移転などの金融取引を高速かつ安全に処理するために設計されています。
ブロックチェーンは、それぞれの目的に合わせて設計されており、それぞれの分野で重要な役割を果たしています。
DAppsの活用種類4選
DAppsにはどのようなものがあるのか、代表的なものを4つ紹介しましょう。
- NFT売買
- ブロックチェーンゲーム
- Defi
- DAO
それぞれの種類について説明します。
NFT売買
NFTは「Non-Fungible Token」の略で「非代替性トークン」のことを指します。NFTは、画像や動画・音楽・文書といったデジタルデータに唯一無二の価値を付与し、ブロックチェーン上に紐付けしたトークンです。
NFTの対比として、FT(Fungible Token)があり、こちらは代替可能なトークンの意味を持ち、ビットコインなどの仮想通貨が挙げられます。
通常デジタルデータは、無限に複製が可能なため美術品やアニメの原画などと比べて原本を証明するのは非常に難しく、むしろ不可能と言った方がよいでしょう。ところがスマートコントラクトを使うと、画像や動画のオリジナル作品の所有権を証明でき、それをブロックチェーン上で譲渡したり売買したりすることも可能になります。
NFTの購入・出品・二次流通ができる最大のプラットフォームOpenSeaは、イーサリアムブロックチェーンで展開されているDAppsです。
最近はPolygonチェーンやSolanaチェーンにも対応しています。OpenSeaではNFTを幅広く取引することが可能です。自分で作品を作って出品もできます。
本来なら複製可能なデータに唯一無二性が付与されるという前例のないテクノロジーに対する価値が認められ、2021年以降NFTは大変な人気を博するようになりました。
こちらの記事でNFTの仕組み、種類、活用事例について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
ブロックチェーンゲーム
NFTゲームとも呼ばれるブロックチェーンゲームもDAppsの一種です。ゲーム業界や投資家に、従来にはなかったさまざまな影響を与えました。
NFT化されたゲーム内のキャラクターを育てて売買したり、武器やアイテムもNFTとして販売したりできるのが、従来の一般的なゲームとはまったく異なる点です。キャラクターやアイテムはイーサリアムなど専用の仮想通貨で購入します。
よってその通貨が値上がりすれば、NFT化されたキャラクターなどの価格も上がります。これにより、ゲームをしながら稼げる「Play to Earn」もNFTゲームの代名詞のようになりました。
こちらの記事でGameFiの仕組み、将来性について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
Axie Infinity(アクシーインフィニティ)などの人気ゲームでは、経済的余裕のない東南アジアの若者に富裕層がNFTを貸付け、ゲームで獲得した利益を分け合うスカラーシップ制度まで生まれたのです。
こちらの記事でゲームプログラマーの将来性、GameFiのために必要なスキルについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
Defi
Defiは「Decentralized Finance」の略で「分散型金融」を意味します。銀行をはじめとする金融機関を介さずに、送金や決済・融資・保険といった金融取引をノード同士で直接行います。
DAppsを活用してDefiを展開する取引所はDEXと呼ばれます。一方、中央集権型の取引所はCEXと呼ばれ、取引を行うためには、取引所に身分を証明して口座を開設し、そこに資金を預けなければなりません。
こちらの記事でDEXの仕組み、CEXとの違いについてはこちらについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
Defiを活用すれば取引時間が大幅に短縮され、手数料も非常に安く済むうえ身分証明が必要ないので、従来の金融機関で口座を持てない人たちに金融サービスを提供できるのも利点です。
DEX(分散型取引所)では、ユーザー同士で通貨やトークンのスワップ(交換)などはすべてスマートコントラクトによって自動実行されます。またDEXに仮想通貨を預けておくだけで利息や取引手数料の一部が得られるイールドファーミングも投資家たちの耳目を集めています。
代表的なDefiのDAppsに、Uniswap(ユニスワップ)やCompound(コンパウンド)が挙げられます。
こちらの記事でDAppsを使うDefiの仕組みやメリットについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
DAO
DAOは「Decentralized Autonomous Organization」の略で「分散型自立組織」のことです。中央集権的管理者を持たず、独自のトークンを保有する個人が運営する組織です。
トークンを持つことで意思決定に参加でき、その内容は決められた通りにスマートコントラクトで自動実行されます。
DAOの活用方法は、経済事業体に限りません。同じ趣味を持つファンコミュニティや同じ投資目的を持つ投資家のネットワーク、チャリティプロジェクトなどありとあらゆる組織の運営を透明公正に行いながら、簡単に世界規模に広げる仕組みを構築できます。
そのため、上司や部下・取引先間で人と人が密に繋がって業務を進めるといった従来の組織とは異なる仕事像の構築が期待されています。代表的なDAppsとして、MakerDAOや和組DAOが挙げられます。
こちらの記事でDAppsベースのDAOの特徴や仕組みについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
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DAppsのメリット
DAppsのメリットは以下です。
- 安全性と透明性が高い
- 運営コストが削減できる
- システムの故障に強い
- IDOで資金調達できる
それぞれのメリットについて説明します。
安全性と透明性が高い
DAppsはブロックチェーンベースのため、全ノードの承認がなければ書き換えができません。つまり改ざんはほぼ不可能です。全取引・全契約はブロックに記録され、いつでも閲覧可能なため、安全性と透明性の高さが大きなメリットです。
運営コストが削減できる
DAppsは、分散型で管理者不在が特徴のため、いったんリリースすると人が取引に介入する必要はほぼなくなります。銀行や証券その他のサービス業のように運営面での人材、およびサーバーが理論上は必要なくなるためコスト削減が可能となります。
システムの故障に強い
DAppsでは、大量のノードがP2Pでつながっています。よってもし一部のノードが故障しても他のノードで十分カバーでき、承認やブロックへの書き込みが停滞することもないので、トラブルに強い点も大きなメリットです。
IDOで資金調達できる
DEX(分散型取引所)をつかって独自トークンを発行するIDO(イニシャルDEXオファリング)を活用すれば、幅広く投資家たちから資金を調達できます。イメージとしては、従来の株式市場でのIPO(新規株主公開)に近いです。
しかし、IDOでは仲介者なしでDApps上の数クリックで流動性プール(資金の受け皿)を作成できます。流動性プールに溜められた暗号資産を円やドルに換金すれば資金調達が可能となります。
DAppsのデメリット
DAppsで気をつけるべきデメリットは以下です。
- スケーラビリティ問題
- デプロイ後の変更が困難
それぞれのデメリットについて説明します。
イーサリアムのスケーラビリティ問題
イーサリアムは、取引数が増加すると取引手数料(ガス代)が高く、かつ取引処理にかかる時間が遅くなる「スケーラビリティ問題」を抱えています。開発者は何度も大型アップデートを繰り返し、2022年9月には承認アルゴリズムをPoW(プルーフオブワーク)からPoS(プルーフオブステーク)に変更しました。
こちらの記事で最近PoSがなぜ採用されているか詳しく解説していますので併せてご覧ください。
加えて、イーサリアムのスケーリング問題を軽減する補助的存在となるレイヤー2Polygon(旧MATIC)が開発されました。トランザクションスピードはイーサリアムの4,000倍、ガス代はイーサリアムの数千〜数万分の1という安さを実現しています。
こちらの記事でPolygonの特徴やメリットについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
アップデートによりガス代の低下と高速処理が可能となりましたが、スケーラビリティ問題の完全解決には至っていません。これから、さらなるアップデートが待たれます。
デプロイ後の変更が困難
DAppsは、いったんデプロイして後悔されると修正や書き換えができません。全ノードの承認を得なければ叶わないため、実質的には不可能といってよいでしょう。
よってリリース前には、入念なテストを繰り返し重ねることが重要となります。
DAppsの将来性
DAppsの将来性について、以下の3つのポイントから説明します。
- レイヤー2ブロックチェーンの成長
- 進化系プラットフォーム
- メタバースとの融合
それぞれのポイントについて説明します。
レイヤー2ブロックチェーンの成長
イーサリアムブロックチェーンのスケーラビリティ問題を解決すべく、ポリゴン(Poligon)のようなレイヤー2ブロックチェーンが登場しています。イーサリアムとは独立しつつも互換性のあるオフチェーンを立ち上げることで、イーサリアムにかかる負荷を軽減できます。
近年ではイーサリアムよりもはるかに運営コストが低いポリゴン発のDAppsが増えており、DApps開発へのハードルが大幅に下がっている点は注目に値します。
進化系・特化系プラットフォーム
2022年12月、最新のゲーム特化型ブロックチェーン「Oasys(オアシス)」が登場しました。Oasysの特筆すべき点は、一定以上の独自トークンを支払って誰でもDApps(ブロックチェーンゲーム)を開発・実装できるプラットフォームであることです。
バリデーター(取引の承認を行う者)には、セガやスクウェア・エニックス、bitFlyerといったゲームや仮想通貨関連、Web3業界の大手企業21社が参画しています。ガス代もすべて企業が負担するため、プレイヤーは仮想通貨を買わずにガス代も無料でゲームが楽しめる画期的なプロジェクトです。
加えて、Oasysでは独自のアーキテクチャによって超高速処理も実現しています。2025年以降をめどに1,000のプロジェクトのリリースと1億人のユーザー突破を目指しており、予定通り進めば業界に大きな風穴を開けることになるかもしれません。
ユーザーのニーズにこたえるさまざまな機能を持ったDAppsやDAppsの開発環境の登場によって、ますますDAppsの社会インフラ化が進んでいくでしょう。
メタバースとの融合
DAppsとメタバースは、相互に連携することが可能です。例えば、以下のようなメタバースの活用方法をDAppsを使って分散型に実現できるでしょう。
- メタバース内の仮想商品やサービスを購入
- メタバース内でのアバターの所有権やアイテムの取引
- メタバース内でのイベントの開催
- 金融商品や不動産の取引
ブロックチェーン技術とバーチャルリアリティ技術の組み合わせにより、より自由で分散化されたデジタル世界が構築されることが期待されています。
メタバース・NFTとの連携により、さまざまな形でDAppsのニーズが高まり、その発展性は無限大といっても過言ではないでしょう。
まとめ
スマートフォンで利用するアプリと同じように、DAppsも開発者のアイデアやユーザーから寄せられるニーズ、社会情勢などによって機能や役割は際限なく広がっていくと期待できます。
DAppsの主要開発言語であるSolidityのスキルだけでなく、メタバースやNFTと言った他のWeb3.0分野での開発スキル、従来の不動産業界や金融業界での開発スキルなどのさまざまな入り口からの人材が必要とされています。
したがって、DApps開発のスキルを持つことができれば、Web3.0業界でのキャリアアップの際にはとても大きな武器となるでしょう。
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