イーサリアムのスケーリングソリューションとして名高い「Polygon」(ポリゴン)。その使いやすさとクオリティの高さが呼び水となって他のチェーンからシフトするデベロッパーやユーザーの流れが止まりません。
グローバルではディズニーやスターバックス、コカコーラ、国内でもレコチョクやSBIホールディングスといった名だたる企業がPolygonを活用しています。2022年の時点でDappsの数は53,000を超えており、DeFi、NFT、メタバースなどWeb3領域におけるメインプレーヤーとしての役割が、今後さらに増していくことは間違いないでしょう。
そこで今回は、Polygonが誕生した背景、特徴、注意点と今後について詳しく解説します。とくにWeb3での仕事探しをご検討のエンジニアの皆様には参考になる内容となっています
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Polygonとは?
Polygon(ポリゴン)はイーサリアムのスケーリングソリューション、そしてレイヤー2として開発されたブロックチェーンのプロトコル、及びフレームワークです。サイドチェーンと呼ばれることもあります。
こちらの記事でブロックチェーンの仕組み、活用方法について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
誕生したのは2017年、もともとの名称は「MATIC」(マティック)でした。
こちらの記事でPolygonのメインチェーンであるイーサリアムの基本的な仕組みについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
スケーラビリティ問題解決のために誕生
スケーラビリティ問題解決の流れで開発されたのがPolygonの前身であるMATICでした。
スマートコントラクトを初めて取り入れたイーサリアムの存在を世に広める一つのきっかけとなったのが、「Crypto Kitties」をはじめとするブロックチェーンゲームです。しかしユーザーが増えるにつれ、ガス代(送金手数料)の高騰とトランザクションの遅延というスケーラビリティ問題が深刻な課題として浮上します。
スケーラビリティ問題が立ちはだかる限り、多くのユーザーにとって使いやすいインフラや人気コンテンツとなることは極めて困難です。
そこで、メインネットであるイーサリアムへスムーズに接続できて、かつスケーラビリティ問題を解決するスケーリングソリューションの存在に対するニーズが大いに高まったのです。
MATICからPolygonへ
2020年にPolygon Posチェーンがローンチされると、2021年にはプロジェクト名が正式にMATICから「Polygon」に変更されます。そしてネイティブトークンのみに「MATIC」の名が残りました。
このMATICを使ってPolygonチェーン内のトランザクション手数料の支払いと、ステーキングが可能となります。
Polygonのマスアダプションとしての役割は顕著で、その用途はブロックチェーンゲームやDeFi、NFTへと短期間のうちに広がります。2022年の時点でDappsの数は53,000を超え、派生プロジェクトも時とともに増加する傾向にあります。
Dappsについて詳しく知りたい方はこちらをご参考ください。
Polygon5つの特徴
Polygonには、以下のような特徴があります。
- イーサリアムのレイヤー2
- PoSを採用
- DeFiでの活用事例が多い
- プロジェクトが豊富
- 提携企業が豊富
それぞれについて解説しましょう。
イーサリアムのレイヤー2
Polygonが開発されたのは、イーサリアムのスケーラビリティ問題を解決するレイヤー2としての役割を果たすためです。メインチェーンであるイーサリアムの補助的存在で、イーサリアムとの互換性が保たれています。
1秒あたりのトランザクションスピードが最大65,000と、イーサリアムの4,000倍近くを実現しました。ガス代も、イーサリアムの数千〜数万分の1という安さで、スケーラビリティ問題を大幅に解決するにいたりました。
PoSを採用
Polygonがスケーラビリティ問題を解決できたのは、コンセンサスアルゴリズムに「PoS(プルーフ・オブ・ステーク)」を導入したことによります。仮想通貨の先駆けビットコインをはじめ、イーサリアムもコンセンサスアルゴリズムには、「PoW(プルーフ・オブ・ワーク)」を採用しています(イーサリアムは2022年9月にPoSへシフト済み)。
PoWは、高度な計算競争の勝者となった取引の承認者(マイナー)が新たなブロックをチェーンにつなぐ権利と、マイニング報酬を仮想通貨で受け取るメカニズムです。しかしPoWではトランザクションごとに時間がかかりすぎるうえ、膨大な電力量を要することから限界論が強まりました。
こちらの記事でPoWをまだ使っているビットコインの仕組みについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
一方、PoSでは取引承認者はバリデータと呼ばれます。バリデータの持つノードごとのMATICの保有量や保有期間の長さによってブロックを生成する権利が与えられます。PoWとはまったく異なる切り口で生み出された合意形成アルゴリズムになります。これにより、取引時間の短縮化とガス代の抑制が実現したのです。
こちらの記事で最近PoSがなぜ採用されているか詳しく解説していますので併せてご覧ください。
DeFiでの活用事例が多い
Polygonの誕生により発展したのがDeFi(分散型金融)です。DeFiは、銀行や証券会社といった中央集権的管理者を介さず、すべての取引が一対一のユーザー同士でスマートコントラクトによって自動実行される金融サービスです。
こちらの記事でPolygonでますます便利になったDeFiの活用方法について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
DeFiの機能はレンディング(融資)、保険、ステーキング、流動性マイニングなど内容もさまざまです。いずれも手数料が極めて安価で取引スピードが速い点が高い評価を受けています。
加えてDeFiは、身分証明をせずに自身のウォレットを直接チェーンにつないで取引できるので、銀行口座を持てない多くの人々(例:開発途上国の人々)に金融サービスを提供できる点も見逃せません。
Polygon PoSチェーンがローンチされた2020年から約1年のうちにDeFi市場は約5倍に膨らみ、約11兆円の取引高をマークするにいたりました。
プロジェクトが豊富
実はPolygonは、DAppsやDeFiを稼働させる単一のプロジェクトではありません。それ以外にも複数のスケーリングソリューションプロダクトで構成されているのが、他のブロックチェーンプロジェクトと異なる点です。
具体的には以下のようなものがあります。
- Polygon PoS(ポリゴンポス)
- Polygon SDK(ポリゴンエスディーケー)
- Polygon Avail(ポリゴンアベイル)
- Polygon Meiden(ポリゴンマイデン)
- Polygon Hermez(ポリゴンエルメス)
- Polygon Nightfall(ポリゴンナイトフォール)
一般にPolygonと呼ばれ、最も名が通っているネットワークは「Polygon Pos」です。NFTやブロックチェーンゲームに活用されます。
「Polygon SDK」を使えば独自のブロックチェーンが立ち上げられます。
「Polygon Avail」は、スケーラビリティを高くして多くのトランザクションを担保するソリューションです。
「Polygon Nightfall」は、大企業がPolygonを活用する際のセキュリティを保証するためにゼロ知識証明の使用を可能にするものです。
提携企業が豊富
Polygonは提携企業や団体が豊富なところも特筆すべき点です。正式名称がPolygonとなってすぐに、開発者支援の目的で「Polygon Studios」という組織が立ち上がりました。
CEOには、GoogleでYouTubeのゲーム部門責任者だったライアン・ワイアット氏が就任しています。以来、数々の企業とパートナーシップを結んだり、サービスを共同提供したりしています。
例えば、大手コーヒーチェーン「スターバックス」とともに『Starbucks Odyssey』を開発しました。顧客や従業員に向けてNFTスタンプを発行することで新たな特典やコーヒー体験の提供を可能にします。
また、ゲーム開発企業「サードバース」とともにブロックチェーンゲーム『キャプテン翼-RIVALS-』を開発しています。アンバサダーにプロサッカー選手の長友佑都氏を起用して話題となりました。
他にも英国の高級自動車メーカー・ベントレーやコカコーラ、国内では自民党青年局が、Polygonを使って独自のNFTを発行しています。
以上のように多彩な業界へと積極的にアプローチすることにより、Polygonはブロックチェーン業界における存在感を確実に増しているのです。
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Polygon2つの注意点
Polygonには以下のような注意点があります。
- ハッキングの可能性
- イーサリアムキラーがライバル
順に解説していきましょう。
ハッキングの可能性
Polygonには、スケーラビリティ問題の解決と引き換えにしたハッキングリスクがあります。
Polygonは「Plasma」というサイドチェーン技術を利用することで親チェーンのイーサリアムに接続します。子チェーン、孫チェーンという形で接続し、最終データを親チェーンに保存する仕組みです。
これによりスケーラビリティ問題を解決できるのですが、子チェーンや孫チェーンの運用は不特定多数に任せるため、そこで不正やハッキングが生じる恐れがあるのです。
これを回避するためには、親チェーンにつながるブロックチェーンをすべてダウンロードのうえ監視する必要があり、負担が少なくありません。
イーサリアムキラーがライバル
イーサリアムの代替として開発された以下のようなイーサリアムキラーの存在は無視できません。
- ポルカドット
- カルダノ
- アバランチ
- ソラナ
上記を始めとするイーサリアムキラーは、Polygonと異なりイーサリアムに対抗する目的で開発されました。
オープンソースのためDAppsの開発も可能なうえ、ガス代は安価、取引にかかる時間も大幅に短縮化されています。今後も増える可能性は十分にあるため、動向によってはイーサリアム、並びにPolygonの市場も奪われかねないでしょう。
Polygonの将来性3ポイント
Polygonに高い将来性がある理由として、以下が挙げられます。
- 持続可能性に優れている
- NFT・メタバースとの親和性
- 仮想通貨市場での信頼と人気
それぞれのポイントについて説明します。
持続可能性に優れている
Polygon(ならびにイーサリアム)が使うPoSは、持続可能性に優れている機能とみなされています。
仮想通貨批判の一因として環境問題があります。ビットコインをはじめとするPoWを採用しているブロックチェーンプロジェクトでは、取引の承認とブロック生成に膨大な電力を使用します。
これによりCO2排出量の増加にともなう地球温暖化が促進されるという理由からです。この点、PolygonはPoSを導入しているため、持続可能性に優れているといってよいでしょう。
イーサリアムも、2022年9月の大幅アップデートにより、PoWからPoSへの変更が行われました。よってPolygonを含むイーサリアムエコシステムは、スケーラビリティ問題を克服しながら環境問題悪化の阻止にも一役買っているのです。
こちらの記事で最近PoSがなぜ採用されているか詳しく解説していますので併せてご覧ください。
NFT・メタバースとの親和性が深い
Polygonは、すでに多くのNFT発行に活用されています。世界最大のNFT取引所である「OpenSea」においてPolygonがガス代無料で利用できるという点もその市場価値を高める一因と考えられるでしょう。
こちらの記事でNFTの仕組み、活用例について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
Polygonチェーン上で開発されたメタバースゲーム『The Sand Box』では、ゲーム内の不動産やキャラクターアイテムなどをNFTとして売買できます。三菱総合研究所の調査では、2030年にはメタバースの市場が約24兆円にまで拡大すると試算されています。そう考えると、NFTやメタバースとの親和性が深いPolygonへの需要は今後ますます高まると期待できるでしょう。
仮想通貨市場での信頼と人気がある
Polygonを使ったDeFiプラットフォームとして、以下のようなさまざまなDEX(分散型取引所)が存在します。
- Uniswap
- ApeSwap
- SushiSwap
- Curve
数だけでなくサービス内容も日々進化しています。DEXを起点としてブロックチェーンゲームやNFTがシームレスにつながり、そのユーザビリティと拡大するエコシステムで開発者やユーザーからの人気は高まる一方です。
現に他のブロックチェーン開発者やユーザーが、Polygonチェーンへと多数シフトする様子が見られます。今後もこのような動きが活発化すれば、Polygonの将来性は非常に明るいと期待できるのです。
メタバースエンジニアでよくある質問まとめ
- Polygonとは?
-
Polygon(ポリゴン)はイーサリアムのスケーリングソリューション、そしてレイヤー2として開発されたプロトコル、及びフレームワークです。サイドチェーンと呼ばれることもあります。誕生したのは2017年、もともとの名称は「MATIC」(マティック)でした。詳しくはこちらにジャンプ。
- Polygonの特徴は?
-
Polygonには、以下のような特徴があります。
- イーサリアムのレイヤー2
- PoSを採用
- DeFiでの活用事例が多い
- プロジェクトが豊富
- 提携企業が豊富
詳しくはこちらにジャンプ。
まとめ
イーサリアムのレイヤー2として開発されたPolygonが、一部ではイーサリアムを凌ぐほどの人気を集めるまでになりました。Polygon関連の求人案件も着実に増えています。とりわけNFTやメタバースにおけるニーズの高さは顕著で、今後の動向からますます目が離せません。
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