Amazonが提供するクラウド開発サービスの「AWS(Amazon Web Service)」を専門的に扱うAWSエンジニアが大変注目されています。
AWSは、240以上の機能を有し、低コストで必要な機能を必要な分だけ利用でき、拡張性にも優れているとあって国内外の名だたる企業で活用されています。そのため、今からでもAWSエンジニアを目指せば先で活躍の場が広がるでしょう。
こちらの記事でITエンジニアの種類について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
今回は、そんなAWSエンジニアの仕事内容や必要なスキル、気になる年収や向いているタイプ、将来性について詳しく解説します。
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AWSエンジニアとは?
「AWSエンジニア」とは、AWSが提供する以下のようなサービスを利用して主に企業におけるクラウド開発を行うインフラエンジニアのことです。
こちらの記事でインフラエンジニアの仕事内容、年収相場について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
サービス名 | 目的 | 説明 |
---|---|---|
Amazon EC2 (Elastic Compute Cloud) | コンピューティング | 仮想サーバーを提供し、スケーラブルなコンピューティングリソースを提供します。開発者は EC2 インスタンスを起動し、アプリケーションを実行できます。 |
Amazon RDS (Relational Database Service) | データベース | 簡単にスケーラブルなリレーショナルデータベースをセットアップできます。MySQL、PostgreSQL、Oracleなど、さまざまなデータベースエンジンがサポートされています。 |
AWS Elastic Beanstalk | サーバー環境の構築 | アプリケーションをデプロイし、スケーラブルなWebアプリケーション環境を簡単に構築できます。自動化されたデプロイメントとスケーリングを提供します。 |
Amazon CloudFront | コンテンツ配信 | 高速でセキュアなコンテンツ配信ネットワーク(CDN)を提供し、ユーザーエクスペリエンスを向上させます。 |
Amazon S3 (Simple Storage Service) | オブジェクトストレージ | 大容量のデータを格納し、取得するためのスケーラブルなオブジェクトストレージを提供します。静的ウェブサイトホスティングにも使用できます。 |
AWS Identity and Access Management (IAM) | セキュリティ | アクセス制御と認証を管理し、セキュリティを向上させます。また、Amazon GuardDutyやAWS WAFなどのセキュリティサービスも提供されています。 |
AWS Lambda | アプリケーション開発 | イベント駆動型のサーバーレスコンピューティングサービスで、アプリケーションの実行を簡素化します。また、AWS CodeDeployやAWS CodePipelineなど、開発サイクルを効率化するツールも提供されています。 |
AWS IoT Core | IoT構築 | IoTプラットフォームで、デバイスの接続、管理、通信をサポートします。リアルタイムデータ処理やルールベースのアクションを実行できます。 |
Amazon SageMaker | AI構築 | 機械学習モデルのトレーニングとデプロイメントを容易に行えます。AIを活用したアプリケーション開発が可能です。 |
Amazon SES (Simple Email Service) | メールの一括送信 | 大量のメールを安全かつ信頼性の高い方法で送信できるサービスです。 |
AWSは、もともとはAmazonのEC事業を充実させるために開発されたクラウドシステムです。それを一般化したうえ、広くサービスとして提供したのが現在のAWSです。
その機能性の幅広さから、AWSエンジニアが活躍できる業界もITやWeb関連に始まりゲーム、製造業、金融、商社、メディア、広告関連と非常に多岐に渡ります。クラウドコンピューティングの分野でリーダーであり、クラウドエンジニアにとって魅力的なキャリアの選択肢となっています。
AWSエンジニアの仕事内容
AWSエンジニアの仕事内容について解説しましょう。具体的には以下の通りです。
- AWS開発環境の設計
- 構築
- 保守・運用
AWS開発環境の設計
AWSエンジニアは、まず仮想サーバーやストレージなどAWSを使った開発環境の企画・設計を行います。企業の要件に合わせた最適なシステムを構築する役割を果たします。
企画・設計の際に重要なのは、可用性、拡張性、セキュリティなどを考慮した最適なシステムに仕上げることです。AWSの多彩なサービスから適切なものを選び、システム全体の設計を行います。それが企業として提供するクラウドサービスやパフォーマンスの精度を強く決定づけるからです。
必要なスケーリングとセキュリティ対策を適切に組み込むことが重要です。AWSエンジニアは、サービスの選択、リソースの最適化、予算の設定など、コストに対する意識を持ち、無駄なコストを避ける必要があります。
クラウド構築
設計の次は、その設計に沿って環境を構築するステップに進みます。AWSには240を超える機能があります。これらを最適なかたちで組み合わせ、クラウド上に独自のインフラを構築していくのです。
AWSは常に新しいサービスや機能を提供しており、その進化を追跡し適用することが求められます。AWSエンジニアは、新しいテクノロジーやベストプラクティスについて学び、システムに統合するスキルが必要です。
保守・運用
環境構築ができたら、実際に開発したアプリケーションやソフトウェアをクラウド上で運用します。問題なく稼働できているかを常に監視し、異常があれば対処するのもAWSエンジニアの重要な役割です。
AWSでは、随時、新たな機能が提供されるので、必要に応じてそれらを加えたり、従来の機能を削除したりしてより最適なシステムへとアップデートしていきます。クラウド環境では、トラブルシューティングがリアルタイムで行われるため、冷静な判断力と対応力が求められます。
AWSはセキュリティに非常に優れたツールとリソースを提供していますが、それでもセキュリティは絶えず注視される必要があります。AWSエンジニアは、アクセス制御、暗号化、脆弱性スキャンなどのセキュリティプラクティスに詳しく、システムの脆弱性を最小限に抑える努力を怠ってはなりません。
AWSエンジニアに必要な6つのスキル
続いてAWSエンジニアに必要なスキルを紹介しましょう。具体的には以下の通りです。
- AWSへの理解と活用スキル
- インフラ構築の知識
- OSとミドルウェアの知識
- ネットワーク構築スキル
- セキュリティのスキル
- データを扱うスキル
AWSへの理解と活用スキル
AWSを有効に活用すると、クラウド上で実にさまざまなシステムが提供できるようになります。そのためには、AWSを深く理解すると同時に、目的に合わせて最大限に活用するスキルが求められます。クラウドコンピューティング、AWSサービス、リージョン、アベイラビリティーゾーンなどの基本概念を理解することが重要です。
240を超える機能の中から必要なものを必要なボリュームだけ活用できるのがAWSの大きな魅力です。主要なAWSサービス(EC2、S3、RDS、Lambda、VPCなど)の機能と適用範囲を知っておきましょう。どれを選択するかによって、パフォーマンスや拡張性、さらにコストも大幅に変わってくるので最適化できるスキルが必要になるのです。
インフラ構築の知識
AWSエンジニアのメイン業務は、インフラの設計と構築です。システムの可用性、拡張性、セキュリティを考慮してAWSインフラストラクチャの設計ができる能力が必要です。そのため、仮想マシン、サーバー、ストレージ、ネットワークなどの知識やスキルが必要になります。
インフラストラクチャのコード化(Infrastructure as Code、IaC)や自動化ツールを使用してインフラを管理し、再現性を確保します。
OSとミドルウェアの知識
AWSエンジニアには、LinuxやWindowsに代表されるOSの知識が不可欠です。とりわけ低コストで運用可能なLinux系を導入している企業が多いため、しっかりと理解を深めておくと活躍の場が広がるでしょう。AWS EC2インスタンスでLinuxを適切にセットアップ、設定、管理できることが求められます。
また、Webサーバーやアプリケーションサーバー、DBMS(データベース管理システム)など、OSでは実行不可能な込み入った処理を行えるミドルウェアを、インストールしたり、バージョンアップしたりするスキルも強く求められます。
ネットワーキングスキル
ネットワーキングスキルは、AWSエンジニアにとって不可欠な要素であり、クラウド環境での安全で効率的なデータ転送と通信の基盤を築くために必要です。以下に、AWSエンジニアに必要なネットワーキングスキルを詳しく説明します。
- VPC設計
Virtual Private Cloud(VPC)の設計は、AWS上でのネットワーク環境を構築する際の基本です。VPCは仮想的なネットワークを提供し、セキュアなリソースの分離を可能にします。ネットワークセグメンテーションを適切に行い、異なるアプリケーションやサービス間でトラフィックを分離し、セキュリティを確保します。 - ルーティングとネットワークアーキテクチャ
サブネット、ルートテーブル、VPN接続、ピアリングなど、AWS内でのネットワーク構成を管理します。 - トラブルシューティング
ネットワーキングスキルはトラブルシューティングにも不可欠です。ネットワークの障害を検出し、迅速に対処し、サービスの可用性を維持します。AWSのネットワークモニタリングツールやログ分析を活用して、問題を特定し解決します。
AWSエンジニアとしての成功には、クラウド環境内でのネットワーキングスキルが欠かせません。
セキュリティスキル
オンプレミスに比べると外部との通信が頻繁なクラウド上でのインフラ構築にあたっては、とくに以下のようなセキュリティの重要性が高まります。
- IAM(ユーザーと権限の管理)
- セキュリティグループ
- データの暗号化
- VPC(仮想プラーベートクラウド)によるアクセス制御
- ネットワークACLの設定
- DDoS攻撃への対策
AWSエンジニアにはデータの機密性、完全性、可用性を高度に維持できるセキュアな環境構築スキルが強く求められます。また、システムの脆弱性スキャン、パッチ適用、セキュリティログのモニタリングなど、セキュリティに関する実務経験が必要です。
データを扱うスキル
AWSエンジニアには、データ保存やバックアップ、復元、さらにアクセス管理といったデータ管理スキルも求められます。
AWS S3(Simple Storage Service)を使ったデータの保存と管理では、ストレージクラスの選択(標準、インテリジェントティアリング、Glacierなど)に基づくコスト効率の最適化が求められます。また、AWS RDS(Relational Database Service)やAmazon DynamoDBなどのデータベース管理スキルも必要です。
ビッグデータを取り扱うのであれば、AWS EMR(Elastic MapReduce)やRedshiftなどを活用したビッグデータ処理とデータ分析のスキルも求められるでしょう。
AWSでは、データ容量は従量課金制となっているため、適切にデータ管理ができればコストを抑えることができます。無駄があれば余分な費用がかさむため、継続的に利用する上では非常に重要な要素となるでしょう。
AWSエンジニアの年収相場
続いて、AWSエンジニアの年収について解説しましょう。会社員とフリーランスにわけて見ていきます。
会社員の場合
AWSエンジニアとして正社員で勤務する場合、平均年収は580〜700万円前後が平均的な相場でしょう。当然ですが、経験豊富で認定資格を持っているエンジニアは高い年収が期待されます。
また、チームリーダー、マネージャー、アーキテクトなどの役職に昇進したAWSエンジニア、 特定のAWSサービスやスキルに特化したエンジニアは高い年収を得ることができます。
国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると国民全体の平均給与所得が約458万円となっているため、かなり上回っているといえるでしょう。
フリーランスの場合
AWSエンジニア向けのフリーランス案件の平均単価が約70万円から80万円前後です。収入はプロジェクト単価とプロジェクトの数に大きく依存しますが、継続的に案件を受けることができれば、月収が60万円から80万円の範囲で安定する可能性が高まります。
フリーランスの場合はボーナスがないため、上記の月収を12倍すると年収は約720〜960万円前後が相場となります。余地多くの実績を積み、スキルアップできれば、年収1,000万円超えも十分に可能でしょう。
AWSエンジニアの需要が高い地域や特定のスキルセットに焦点を当てることで、高収入を実現することができます。
AWSエンジニアに向いている人
AWSエンジニアに向いている人は、以下のような特徴があります。
学習意欲が高い | AWSは頻繁に機能が増えたり、改善されたりするため、常に新たな知識とスキルを習得していく姿勢が求められます。 |
論理的思考力が高い | 目的に合わせて数多くの機能の中から最適なものを取捨選択し、うまく連携させる思考能力が重要です。 |
コミュニケーションスキルが高い | クライアントや他のエンジニアとの意思疎通や良い人間関係を構築する柔軟性に富んだ対話力が必要です。 |
AWSエンジニアには未経験からでもなれる?
まったくの未経験からAWSエンジニアを目指すのは難しいといってよいでしょう。AWSエンジニアには、サーバーやネットワーク、OS、ミドルウェア、アプリ開発、セキュリティなど幅広い知識や即戦力として通用するだけの実績が求められるからです。
未経験からAWSエンジニアに転身することは、確かに挑戦的な道のりですが、絶対に不可能ではありません。むしろ、適切な姿勢と計画を持って取り組むことで、素晴らしい成果を達成できる可能性が秘められています。
例えば、すでにインフラエンジニアやプログラマーとして3年以上の実績がある方なら、AWSについての理解を深めることによりAWSエンジニアに転職できる可能性は十分にあるでしょう。
AWSに関する実務経験を積むことが重要です。自分でプロジェクトを進めたり、オープンソースプロジェクトに参加したりすることで実践的なスキルを磨けます。加えて、AWS認定資格は、あなたがAWSエンジニアとしてのスキルを証明する手段です。未経験からでも、AWSの公式トレーニングや学習パスを活用して認定資格を取得することができます。
AWSエンジニアにおすすめの資格
AWSエンジニアになるために有効なさまざまな資格が存在します。中でもAmazonが主催する「AWS認定資格」は、AWSエンジにとして活躍するために必要はすべての知識がまんべんなく習得できるのでおすすめです。
3年ごとの更新制となっているため、継続的に再認定試験を受け続けることによって、アップデートされるAWSの最新知識にキャッチアップすることが可能となるでしょう。
AWS認定資格は以下のようにレベルに応じて4つに区分されており、トータルで13種類あります。
基礎 | Cloud Practitioner |
アソシエイト | SysOps Administrator Solutions Architect Developer Date Engineer(現在はベータ試験として提供) |
プロフェッショナル | Solutions Architect DevOps Engineer |
専門知識 | Security Database Machine Learning Advanced Networking SAP on AWS Data Analytics(2024年4月に廃止予定) |
AWSエンジニアの将来性
IDCジャパンの調査によると2022年の国内クラウド市場の売上額は5兆8,142億円となっており、2027年には、13兆2,571億円と約2.3倍にも拡大する見込みです。
そのため、クラウドプラットフォームへの需要は今後もますます増加していくと考えて間違いないでしょう。しかもその筆頭となるのが「AWS」です。インフラエンジニアからAWSエンジニアへの移行も増えていくでしょう。
こちらの記事でインフラエンジニアの転職事情について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
AWSの機能は常にアップデートを繰り返しており、その数は年間で数千回にも及ぶ勢いです。必要な機能を必要なボリュームだけ活用でき、拡張性にも優れているので、低コストで柔軟にパフォーマンスを最適化できる点は、多くの企業にとって大変魅力的です。
その証拠に、PaaS(Platform as a Service)を利用している国内企業のうち、AWSを導入している企業は60%を上回っています。
こうした状況を鑑みると、AWSエンジニアの将来性は非常に明るいと考えてよいでしょう。キャリアやスキルが不足しているからといって今すぐに転職したり、フリーランスになったりするのが難しくても、これから準備すれば先で十分に活躍のチャンスが見込めるに違いありません。
AWSエンジニアでよくある質問まとめ
- AWSエンジニアとは?
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「AWSエンジニア」とは、AWSが提供するAmazon EC2、Amazon RDS、Amazon CloudFrontなどを利用して主に企業におけるクラウド開発を行うインフラ系エンジニアのことです。
- AWSエンジニアの年収相場は?
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AWSエンジニアとして正社員で勤務する場合、平均年収は580〜700万円前後が平均的な相場でしょう。経験豊富で認定資格を持っているエンジニアは高い年収が期待されます。
AWSエンジニア向けのフリーランス案件の平均単価が約70万円から80万円前後です。収入はプロジェクト単価とプロジェクトの数に大きく依存しますが、継続的に案件を受けることができれば、月収が60万円から80万円の範囲で安定する可能性が高まります。
まとめ
オンプレミスからクラウドへの移行が著しく進むなか、240をこえる機能をもつAWSへの需要は今後ますます加速していくと考えられます。しかもAWSは、AIやIoTといった最新テクノロジーに関する機能も網羅しているため、国内に限ってもその導入例はさらに増加していくと見てよいでしょう。
この流れでAWSエンジニアへの転職や、それを目指すキャリアパスは、大いにおすすめです。今は自信がないという方でも、必要な勉強とキャリアを積み重ねていけば、そのチャンスは確実に広がるでしょう。興味のある方は、本格的に検討してみてはいかがでしょうか。
Tech Forwardに登録されているAI・Web3分野の最新求人一覧を以下からご覧ください。
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