2022年12月に世界でも類を見ないゲーム特化型ブロックチェーンプロジェクトの「Oasys(オアシス)」がメインネットをローンチしました。誰でもブロックチェーンゲームを開発できるプラットフォームであり、手数料無料かつ高速取引を実現した点が大きな特徴です。
これからますます伸びるであろうGameFi業界で、Oasysの存在価値はますます高まっています。
本記事では、Oasysの仕組みや特徴、将来性について詳しく解説します。これからWeb3での仕事をお考えのエンジニアの方にもたいへん参考となる内容です。
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Oasysとは?
Oasysは「Blockchain for Games」をコンセプトとしたゲーム特化型ブロックチェーンです。数あるブロックチェーンの中でも、ゲームの開発とリリースのみを目的としたものはOasysが業界初となります。
こちらの記事でブロックチェーンの仕組み、活用事例について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
Oasysプロジェクトは2022年2月に立ち上がり、創業者には業界で著名な以下の方々が含まれます。
- 國光宏尚氏 gumi創業者でThirdverse 代表取締役
- 中谷始氏 バンダイナムコ研究所 代表取締役社長兼CEO
- 内海州史氏 セガ副社長
- Gabby Dizon氏 Yield Guild Games共同創業者
プロジェクト発足の5ヶ月後には25億円の資金調達に成功し、さらに5ヶ月後にメインネットのローンチを果たしました。
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バリデータにもWeb3・ゲーム系大企業が名を連ねる
ブロックチェーンに記録されるデータの正しさを検証するバリデータには、bit FlyerやCripto Gamesといった仮想通貨やブロックチェーン関連のWeb3企業が参画しています。他にも以下のような国内の大手ゲーム会社も顔をそろえています。
- SQUARE ENIX
- バンダイナムコ
- SEGA
- GREE
- gumi
Oasysのエンドユーザーは手数料を負担する必要がないこと、そして高速取引が可能となる点が注目すべき特徴です。プラットフォームの機能をもつOasys上では誰でもゲームを開発できます。
そして、ゲーム内決済、NFTに関わるマルチチェーン対応、複数のゲーム同士における連携などが可能です。将来的にはプロジェクト数1,000超、ユーザー数1億人超を目指しています。
トークンOASはイーサリアム互換
Oasysの独自トークン(仮想通貨)はOASで、EVM(イーサリアム仮想マシーン)互換プロトコルのため、イーサリアムやポリゴンチェーン上での取引も可能です。
こちらの記事でOasysと関連深いイーサリアムの仕組みについて詳しく解説しています。
こちらでOasysと互換性あるPolygonの仕組み、イーサとの関係について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
Oasys開発の背景にスケーラビリティ問題
Oasysは、イーサリアムのスケーラビリティ問題を解決したい仮想通貨やWeb3業界と、オンラインゲームで巻き返しを図りたい国内ゲーム大手の利害が一致して誕生しました。
ブロックチェーンゲームは、スマートコントラクトを有するイーサリアムのDApps(分散型アプリケーション)として誕生しました。
こちらの記事でDAppsとは?仕組みと活用事例について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
ほぼ同時期に同じくイーサリアムを基盤としたDeFi(分散型金融)が脚光を浴び始めます。これらを使用するにはすべてイーサリアムが必要です。
ところがイーサリアムの仕組み上、取引が集中するとブロックチェーンに記録するマイニングに膨大な時間と手数料が必要となる問題が浮上しました。これを「スケーラビリティ問題」といいます。
ゲームではスケーラビリティ問題は致命的
とりわけ大量の処理が必要なゲーム中には、ワンプレイごとに長ければ1時間も待たされたり、手数料(ガス代)が1万円近くも必要となったりする異常事態が発生したのです。ゲーマーは若者が中心のため、手数料の高騰は致命傷となりました。
これによりブロックチェーンゲームは、「高い」「使いにくい」といったネガティブなイメージを抱かれるようになったのです。これに加えて、そもそも法律が未整備でマネーロンダリング(資金洗浄)やハッキングリスクがある仮想通貨をベースとしている点もあり、既存のゲーム業界からも警戒されていました。
NFTやDeFiなどイーサリアム需要増大で状況悪化
また、2020年頃より多額の投資マネーが仮想通貨市場につぎ込まれ、イーサリアムを使うDeFiやGameFi、NFTコンテンツへの人気が急騰したのです。これによりイーサリアムのスケーラビリティ問題はますます深刻化し、そのソリューションが多くの開発者やゲーマーたちから切望されます。
また、かつてはゲーム市場を独占していた日本のゲーム業界も、米国や中国のオンラインゲームに著しく市場を奪われます。
そこで、スケーラビリティ問題を解決したい仮想通貨やWeb3業界と、世界のトップ企業に勝るオンラインゲームで巻き返しを図りたい国内ゲーム大手の利害が一致し、「ゲーム特化型ブロックチェーンプロジェクト」が誕生したのです。
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Oasysの4つの特徴
Oasysにはどのような特徴があるのか、以下からさらに掘り下げましょう。
- 手数料が安価で高速取引が可能
- 2層構造からなる「Oasysアーキテクチャ」
- PoSを採用
- バリデータが豊富
それぞれの特徴について説明します。
手数料が安価で高速取引が可能
Oasysが大きく注目されているのは、ユーザーが負担する手数料が完全に無料な点です。
従来のブロックチェーンゲームは、プレイしたりアイテムを売買したりするのに手数料が必要でした。これが0円となったのです。
理由は、24社(2023年3月時点)におよぶバリデータが手数料をすべて負担する仕組みを構築したからです。
2層構造からなる「Oasysアーキテクチャ」
Oasysが、手数料無料に加えて取引の高速化を実現できたのは「Oasysアーキテクチャ」と呼ばれる2層構造によります。2層構造は以下です。
- レイヤー1の「Hub-Layer」
- レイヤー2の「Verse-Layer」
レイヤー1のHub-Layerはゲームに関する管理業務はいっさい行わず、プラットフォーム全体のシステムを司る役割を担います。具体的には、トークンやNFTの管理、ブリッジ情報の管理、ロールアップのデータ管理、ネットワーク全体の安定などです。
一方のレイヤー2 Verse-Layerでは、ゲームから生じる大量のトランザクションを全て処理します。開発者は、好きなVerse上でゲームを開発することもできれば、100万OAS支払うことによりVerse-BuilderとなってVerseを構築することも可能です。プレイヤーは、好きなVerseを選んでゲームをすることができます。
従来なら同じチェーン上で管理していたものをレイヤー1と2に分けることで負担を大幅に軽くして、取引の高速化を実現したのです。
PoSを採用
Oasysのレイヤー1では、コンセンサスアルゴリズムに「PoS(プルーフ・オブ・ステーク)」を採用しています。
PoSでは、ビットコインのように、マイニングに高性能コンピュータによる膨大な計算が必要なPoW(プルーフ・オブ・ワーク)と異なり、ネイティブトークンOASの保有者であるバリデータが合意形成を行います。
こちらの記事でビットコインの仕組みとメリットについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
これにより電力量を大幅に抑えることができるため、取引スピードの向上、脱炭素に寄与する効果があるとされています。
こちらの記事で最近PoSが採用されている背景を詳しく解説していますので併せてご覧ください。
バリデータの信頼性が高い
2023年3月現在、OasysにおいてPoSによる合意形成を行う初期バリデータには以下の24社が参画しています。
ブロックチェーン系
- Astar Network(アスターネットワーク)
- BOBG(ボブジー)
- bitFlyer(ビットフライヤー)
- Jump Crypto(ジャンプクリプト)
既存ゲーム系
- バンダイナムコ研究所
- SEGA(セガ)
- SQUARE ENIX(スクウェア・エニックス)
- GREE(グリー)
- gumi(グミ)
- Com2us(カムツス)
- Crypt Games(クリプトゲームス)
- NEOWIZ(ネオウィズ)
- netmarble(ネットマーブル)
- NHN PlayArt(NHNプレイアート)
- UBISOFT(ユービーアイソフト)
- WEMADE(ウィーメイド)
- Nexon(ネクソン)
ブロックチェーンゲーム系
- doublejump.tokyo(ダブルジャンプトーキョー)
- MCH
- Mythical Games(ミシカル・ゲームズ)
- thirdverse(サードバース)
- Yield Guild Games(YGG)
通信系
- Softbank
- KDDI
バリデータは大量のOASをステーキングし、その報酬としてOASを受け取ります。これがゲームをプレイする際などに必要な手数料の原資にもなるのです。
「Oasys」の初期バリデータには21社が参画しました。2023年に第二群バリデータ参画企業4社を含めて25社がバリデータとなる予定です。
仮想通貨、ブロックチェーンゲーム等Web3関連企業、ゲーム会社の中でも知名度が高く、多額の資金を保有する企業が数多く名を連ねています。これを見ても日本発ブロックチェーンプロジェクトであるOasysが、Web3において本格的にグローバル展開しようとする姿勢が強く伺えるでしょう。
Oasysの将来性5ポイント
Oasysの将来性を以下から解説しましょう。
- 誰でもブロックチェーンゲームが作れる
- 誰でもバリデータになれる
- 関連企業のクオリティが高い
- 開発案件の期待値が高い
- 仮想通貨OASが国内でも上場予定
それぞれのポイントについて説明します。
誰でもブロックチェーンゲームが作れる
Oasysでは、100万OAS(2023年2月時点で約1,184万円)の資金を提供することで誰でもブロックチェーンゲームを作成できます。各ゲームは一定のユーザーにのみ許可をして参加できるようにしたり、オープンにして誰でも参加できるようにしたり、複数のゲーム間で互換性を持たせたりすることも可能です。
ブロックチェーンゲームを一から開発しようと思うと、コーディングはもちろんトークノミクス設計(仮想通貨の発行に伴う分析)、ホワイトペーパーの作成、コミュニティの形成、プロモーションなど膨大な時間と経験値が求められます。
その点Oasys を利用すればそれらの作業が大幅に効率化できるため多くのプロジェクトが数多く開発されると期待できるでしょう。具体的には、2025年6月を目処に1,000超のプロジェクトと1億人超のユーザー登録を目指しています。
誰でもバリデータになれる
バリデータは21社からスタートしましたが、今後も順次募集し続けます。1,000万OAS(2023年2月の時点で約1億1,840万円)を支払うことで誰でもバリデータになることが可能です。
バリデータはステーキングによって報酬が獲得できるので、今後Oasys上に人気コンテンツが多数登場するようになれば、バリデータも増加して益々財務基盤が強固なプラットフォームになっていくと期待できます。
関連企業のクオリティが高い
Oasysは、世界最大級のゲームギルドであるYield Guild Games(YGG)を母体とするYGC Japanと戦略的パートナーシップを締結しました。
それ以外にも、世界中で3,000万人が所有する世界最大手の仮想通貨ウォレットを手がけるConsenSys、NFT関連業をグローバル展開しているtofuNFTなど業界でもネームバリューの高い企業との提携も行っています。
開発案件の期待値が高い
Oasysでは、すでにバリデータを中心に複数の企業によるゲームプロジェクトが始動しています。
ベンダー | リリース内容 |
---|---|
セガ | 独自IPを活用した『三国志演義』のNFTカードゲームをリリース予定 |
チェーンガーディアンズ | 独自Verseである「チェーンVerse」を構築し『チェーンアリーナ』「チェーンガニーズ』の2つのブロックチェーンゲームをリリース済み |
DMM.com | 独自Verseを構築のうえ『かんぱに☆ガールズ RE:BLOOM』をリリース予定 |
double jump.tokyo | 独自Verseである「HOME Verse」上で『Alkenome Monsters』をはじめとする5つのブロックチェーンゲームをすでにリリース |
既に従来プラットフォームで人気を得ている『三国志演義』のようなタイトルがOasysでリリースされると、ますますユーザーが増えていくでしょう。
加えて、「Oasys Ecosystem Fund」を立ち上げてOasysでのゲームプロジェクト開発希望者を資金援助していく体制も整いつつあるので、今後さらに多くのブロックチェーンゲームが登場すると期待できます。
仮想通貨OASが国内でも上場予定
Oasysは、ネイティブトークンOASを2023年の時点で7つの海外取引所に上場しています。
- OKX
- Bybit
- KuCoin
- Gate
- Huobi
- MEXC
- Bitget
これに加えて、2023年1月31日に国内初となる「bitbank」でも上場する予定であることを発表しています。そうなると国内からも直接OASが購入できるようになるので、Oasysの財政基盤がますます向上すると期待できます。
国内企業はゲームで有効利用できる世界的に認知度の高いIP(知的財産権)を数多く所有しています。それらを広く駆使してOasys上でさまざまなブロックチェーンゲームが展開されれば、Web3で世界をリードできる可能性は十分にあるといってよいでしょう。
Oasysでよくある質問まとめ
- Oasysとは?
-
Oasysは「Blockchain for Games」をコンセプトとしたゲーム特化型ブロックチェーンです。数あるブロックチェーンの中でも、ゲームの開発とリリースのみを目的としたものはOasysが業界初となります。詳しくはこちらにジャンプ。
- Oasysの年収相場は?
-
Oasysにはどのような特徴があるのか、以下からさらに掘り下げましょう。
- 手数料が安価で高速取引が可能
- 2層構造からなる「Oasysアーキテクチャ」
- PoSを採用
- バリデータが豊富
詳しくはこちらにジャンプ。
まとめ
Oasysは、日本発のゲーム特化型ブロックチェーンプロジェクトとして広く注目を集めています。手数料無料で高速取引が可能なため、開発者やゲーマーをはじめWeb3業界でも今後の発展が強く期待されているといってよいでしょう。
複数の興味深いゲームコンテンツが本格的に稼働しはじめた今が、Oasysでの開発分野に乗り出すまたとないチャンスでしょう。従来の据え置き・スマホゲーム分野での開発経験を持っているエンジニアはもちろん、ブロックチェーン分野からゲーム開発分野への転向も求められています。
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