世界は次世代型インターネットといわれる「Web3」の時代へと本格的に突入しました。そのメインプレイヤーはブロックチェーン(分散型台帳)かもしれません。
Web3で勝者となれば、GAFAMを主とする巨大テックから覇権を奪える可能性があるとさえ言われています。しかしその実態はと問われるとよく分からないという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、Web3で実現することやメリット・デメリット、プロジェクトの実例などについて解説します。
こちらの記事でWeb3の主役ブロックチェーン技術の仕組みや将来性について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
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Web3とは何かわかりやすく解説
「Web3(ウェブスリー/ウェブさん)」とは、ブロックチェーンを基盤として、分散化(↔中央集権)を特徴とする次世代型インターネットの概念の呼称です。中央集権的な管理者が不在で、ネットワークの参加者すべてが1対1でやり取りでき、個人で情報管理が可能なのが特徴です。
Web1・2とは何だったのか?
Web1 | ユーザーが閲覧するだけの初期のインターネット 企業から個人への一方的な情報提供がメイン |
Web2 | 企業と個人、あるいは個人同士の双方向のやり取りがメイン EC(電子商取引)やSNSが台頭 |
Web3 | 中央集権的管理者が不在 ネットワークの参加者が1対1でやり取りできる 個人で情報管理が可能 |
一般的には、1990年代半〜2000年代半ばまでがWeb1、2000年代半〜2018年前後がWeb2、そして2019年前後以降から現在に至るまでがWeb2とWeb3の共存期およびWeb3への移行期といえます。各世代の定義は上記のとおりです。
2008年のスマートフォンの登場により急激なデジタルシフトが起こると、場所や時間を問わないさまざまなサービスが登場します。多くの個人にとってWebサイトやアプリが情報源と行動の起点になりました。例えば、SNSを使って個人や企業がインタラクティブな交流関係を構築することができました。
しかしその一方で、ユーザーはプラットフォームの提供者であるGAFAM(Google、Amazonなど)をはじめとする巨大IT企業に膨大な個人情報と手数料が収集される代償を強いられることになります。
ブロックチェーンがWeb3を牽引
Web2までの弊害をなくす目的で注目されるようになったのがブロックチェーン技術です。ブロックチェーンを使えば各コンピュータ同士がクライアントサーバを介さずにP2P方式で繋がります。
その全てのコンピュータにサーバが存在し、それらが承認しなければ取引データは修正も改ざんもできません。よって安全な状態で個人データを自主管理しながら資金やサービスのやり取りが可能となるのです。
特定のサーバへのログインが必要ないため、パブリックなシステムを構築すれば場所も身分も時間も問わずだれでもサービスを享受できます。
こちらの記事でWeb3を実現させたブロックチェーンの仕組みについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
Web3で実現すること6選
Web3でできることの例を以下に挙げます。
- NFT
- ブロックチェーンゲーム
- メタバース
- DAO
- DeFi
- 個人情報の自主管理
それぞれを具体的に解説しましょう。
NFT
NFTとは、Non-Fungible Tokenの略で「非代替性トークン」を意味します。画像や動画、音楽、デジタルアートといったデジタルデータをブロックチェーン上で発行するトークンと紐付けすることによって唯一無二の価値を証明することができます。
従来は無数にコピー可能なデジタルコンテンツの所有権を証明することは不可能でした。これをNFTが可能にしたことは非常に画期的で、広く耳目を集めました。
専用の仮想通貨を使えばブロックチェーン上で自由に売買ができ、取引のたびに原作者に購入代金の一部が支払われる二次流通にも対応可能です。
この仕組みを使って、アーティストやスポーツチーム、高級ブランドなどが絵画や音楽、プレイ中の画像やプライベート性の高い動画、バーチャルブランドアイテムなどをプレミア化して販売するビジネスモデルが広く普及し始めています。
こちらの記事でWeb3の主要プレイヤーであるNFTの仕組みと重要性について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
ブロックチェーンゲームとGameFI
NFTの仕組みをゲームに取り入れたのがブロックチェーンゲームで、NFTゲームとも呼ばれます。ゲーム内のキャラクターやアイテムをNFTにして、同じゲーム内や別のゲーム同士でも横断的に売買することができます。
プレイしたりキャラクターを入手したりするには専用の仮想通貨が必要で、NFTの売買に加えて通貨をステーキングすることによって報酬が得られるのも大きな特徴です。
この仕組みは、プレイしながら稼げるという「Play to Earn」や「GameFI」という言葉を生みました。
昨今は、ゲームに限らず、歩いて稼ぐ、見て稼ぐ、のように何かをして稼ぐことができるようになっている仕組みを総称して「X to Earn」とも呼ばれています。
メタバース
ブロックチェーンはメタバースとの親和性が高い点も魅力です。具体的には、仮想空間内でNFT化したゲーム内のキャラクターアイテムや土地、ビルなどを販売したり、バーチャルライブで使った衣装をNFTで限定販売したりするといったビジネスモデルが構築されています。
DAO
DAOは日本語では「分散型自律組織」と呼ばれ、Web3の代表的な運営形態です。DAOは、プロジェクトごとに賛同者が集まり、資金や労働、知恵などを持ち寄ります。
運営は、ブロックチェーン上で契約がすべて自動実行されるスマートコントラクトを利用。専用のトークン保有者による投票ですべてのプロジェクトや運営方針が決まります。CEOもいなければ上司も部下も存在せず、取引先にも一切の忖度が必要ありません。
そんな次世代型の組織運営手法が大変注目されているのです。すでに世界で数千〜数万と言われるDAOが組織化されているといわれ、米国ではすでにワイオミング州でDAOに法人格を付与できる法律が施行されています。
こちらの記事でDAOの仕組みと活用事例について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
DeFi
スマートコントラクトを利用すれば、ブロックチェーン上でDeFiという分散型金融サービスの提供が可能になります。仮想通貨を使って送金や融資、保険、資金調達などができるようになるのです。
こちらの記事でWeb3での資金調達の代表的な方法であるIDOの仕組みについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
銀行や証券会社などの金融機関を介さず、身分証明書を提示せずにだれでも利用することができます。
こちらの記事でDeFiの仕組みと将来性について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
個人情報の自主管理
ブロックチェーンの特徴を活かし、身分証や成績証明といった個人情報や機密情報を分散管理できるシステムも続々と登場しています。
その一例として政府が主導、資金援助も行う「トラステッドウェブ」が挙げられます。東京大学や大日本印刷、ヤンマーホールディングスなどが実証実験に参加しています。以下のような生活に密着したシステムの実装に注力しています。
- 大学の履修証明の管理と提供
- サプライチェーン上におけるトレーサビリティ
- 医療データのオンライン共有
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Web3がもたらすメリット5選
Web3のメリットは以下です。
- 個人情報が守られる
- データ改ざんに強い
- 表現の自由が守られる
- 誰でも資産が持てる
- クリエイターが活躍できる
それぞれについて解説しましょう。
個人情報が守られる
ブロックチェーンを利用すると個人情報の自主管理が可能になります。Web3では中央管理者が不在だからです。
Web2の段階では、ブラウザ、アプリ、SNS等をサービス利用することで一部のベンダーが個人情報を取得します。個人の情報は、本人の手が及ばない形で管理・利用されています。情報の提供に対して明確な対価はなく、漏洩リスクも多分に抱えているのが現状です。
その点、ブロックチェーンを利用すると個人情報の自主管理が可能になるため、上記のような不利益やリスクから解放されるといってよいでしょう。
データ改ざんに強い
ブロックチェーンでは、すべての取引データが漏れなく記録されブロック内に格納されると、それらが順を追ってチェーンのようにつながっていきます。
極めて不可逆性の強い暗号により管理されているので、Web3が実現すると、悪意のある第三者によってデータ改ざんされたり盗まれたりするリスクが低くなります。
表現の自由が守られる
Web3では、コンテンツを利用した表現の自由と権利が守られる利点もあります。
プラットフォーマーに管理されている場合は、その運営方針によってコンテンツが削除されたり、表現の範囲を規制されたりする恐れがあります。
しかしブロックチェーンではスマートコントラクトによって自動管理されるため、人為的な意思が介入する余地がありません。
誰でも資産を簡単にやり取りできる
DeFiを活用すれば、身分証を提示せずともだれでも金融サービスが利用できるようになります。資産のやり取りで発生する手数料が限りなく低く、オフラインでの信用度を厳密に審査する必要性が低いからです。
そのため、途上国で一定の収入がなく口座を持つことができない人でも資産を保有したりやり取りする機会が広がるでしょう。
クリエイターが活躍できる
Web3では、ブロックチェーンゲームやメタバース、NFTといったさまざまなフィールドでキャラクターの画像や動画、音楽などのコンテンツへのニーズが大幅に増加すると考えられます。
すでに日本国内においてもアニメや漫画、ゲームキャラクターなどへの引き合いが多数発生しています。ライセンス料だけでも莫大な利益の創出が見込まれています。
Web3の浸透により、クリエイターの活躍の場がさらに広がると期待してよいでしょう。
Web3の2つのデメリット
Web3のデメリットは以下です。
- ハッキングリスクがある
- 法整備がなされていない
それぞれについて解説しましょう。
ハッキングリスクがある
Web3ではハッキングリスクが否定できません。ブロックチェーン自体は堅牢でセキュリティが守られています。
それでも、その周辺システムである仮想通貨取引所や別々の仮想通貨を両替して互換性を高めるのに利用するブリッジ技術を狙ったハッキング被害が起きています。
ブロックチェーンシステムの多くは、プログラムコードが公開されているので透明性が高いです。しかしその反面、仕組みがわかるためにハッカーのターゲットにもなりやすい弱点があるのです。
法整備がなされていない
仮想通貨をはじめとするブロックチェーンサービスやDAO、メタバースについては、法整備がいまだ十分ではありません。
そのためもしハッキングによって通貨やデータを盗まれた場合、すべては自己責任となるのが基本です。被害額の多寡に関わらず補償されない可能性が大きいので、その点の理解と認識を深めておく必要があるでしょう。
Web3プロジェクトの実例3選
国内で行われているWeb3プロジェクトを3つ紹介しましょう。
NFT販売サービス「murket」(レコチョク)
音楽配信サイトを運営するレコチョクが、音楽業界に携わる企業やグループ、またコンテンツホルダーに向けて「murket」(ミューケット)というNFT販売が可能なサービスを提供しています。「murket」を利用すると、以下に必要なソリューションがワンストップで得られます。
- オンラインストアが開設
- デジタルコンテンツの販売
- デジタルコンテンツの権利処理
- 顧客データ分析、販促といったストア販売
具体的には、音源と画像、映像と楽譜というように種類の違うコンテンツのセットやチケット、CD/DVD、オリジナルグッズがリリースできます。同時にNFTの販売もできるようになっているのです。
レコチョクは、murket以前からすでに独自ヴォーカルユニットのNFTを販売し、その所有者のみに投票権があるDAOを立ち上げた実績をもちます。そのDAOからすでに楽曲もリリースされており、音楽領域におけるWeb3の先駆者ともいえる存在です。
murketでは、NFTが仮想通貨ではなく日本円で購入できる点が画期的で、ユーザーのハードルを下げる契機になると期待されています。
プロバスケットチーム のファントークン(仙台89ers)
プロバスケットボールチームの「仙台89ERS」はWeb3プラットフォーム提供企業のFiNANCiEと組んで、独自の「仙台89ERSトークン」を発行しました。トークン購入者には、以下のような特典が与えられます。
- 運営の一部に携われるサポーター投票企画への参加
- 特典の抽選応募権利
- グッズ抽選応募権利
トークンはマーケットで取引されており、調達した資金はチームの強化と運営費用に充てられます。
映画制作をNFTで支援(SUPER SAPIENSS)
エンタメDAOプロジェクトの「SUPER SAPIENSS」では、独自トークンやNFTの発行により約3,000名のコミュニティメンバーから累計約5,000万円を調達しました。
立ち上げには、日本映画界を牽引する堤幸彦、本広克行、佐藤祐市の3映画監督が携わっており、すでに調達資金を使って制作された映画1作品とアニメーション作品の第一話が配信されています(2023年3月現在)。
NFTは、実際に映画内のキャラクターとして利用されたり看板やロゴとして登場したりする予定です。さらに以下も与えられる計画です。
- 作品内のキャラクターが持つ超能力の提案権
- 派生NFT優先購入権
- プロジェクトの先行体験
- 商用利用権
Web3の将来性
Web3の将来性はかなり高いといってよいでしょう。
まず、令和4年6月に「デジタル社会の実現に向けた重点計画」が閣議決定されました。その中で「ブロックチェーン技術を基盤とするNFTの利用等のWeb3の推進に向けた環境整備」が盛り込まれたことをうけて、デジタル庁では有識者からなる「Web3.0研究会」が立ち上げられました。
2022年11月には、NTTドコモが暗号資産(仮想通貨)の交換やトークンの発行、ウォレットを一括提供できる基盤をアクセンチュアなどと開発すると表明しています。投入資金は最大で6,000億円とWeb3産業の育成に本格的に取り組む姿勢です。
メタバースは175兆円市場へ
また、CONTRIVE DATUM INSIGHTSによるとWeb3との親和性が高いメタバースの2022年の市場規模は516.9億米ドル(1ドル=135円換算で約7兆円)でした。さらに、2030年までに1.3兆米ドル(同換算で約175兆円)に達すると予測されています。
これらのことから勘案しても、今後Web3は相当の勢いで浸透し、その将来性は極めて高いと期待できるでしょう。
Web3でよくある質問まとめ
- Web3とは?
-
「Web3(ウェブスリー)」とは、ブロックチェーンを基盤として分散化を特徴とする次世代型インターネットの呼称です。中央集権的な管理者が不在で、ネットワークの参加者すべてが1対1でやり取りでき、個人で情報管理が可能なのが特徴です。詳しくは「Web3とは」にジャンプ。
- Web3がもたらすメリットは?
-
Web3のメリットは以下です。
- 個人情報が守られる
- データ改ざんに強い
- 表現の自由が守られる
- 誰でも資産が持てる
- クリエイターが活躍できる
詳しくは「Web3がもたらすメリット」にジャンプ。
- Web3のデメリットは?
-
Web3の2つのデメリット
- ハッキングリスクがある
- 法整備がなされていない
詳しくは「Web3のデメリット」にジャンプ。
まとめ
Web3の基盤であるブロックチェーンは、安全性、透明性、迅速性、非改ざん性といった豊富なメリットにより、官民を問わず強く注目されています。Web2のレガシー(遺物)ともいわれる巨大テックのプラットフォームから脱却する手段は、管理者が必要ないブロックチェーン技術をおいて他にあり得ないでしょう。
本気でWeb3業界での仕事探しや転職を考えるなら、まだWeb3黎明期の今が絶好のチャンスでしょう。
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