米国のIT企業集積地として知られるシリコンバレ発祥のスタートアップは、現在では国内でも数多く存在しています。これらのスタートアップ企業は革新的なアイデアをもとに、大手企業だけでなく国内外から多額の投資を受け、急成長しています。一般的な企業とは異なり、スピード感のある環境で仕事をし、刺激的な業務に携わることができるため、スタートアップは魅力的な転職先と言えるでしょう。
しかし、スタートアップは規模が小さく知名度が低いことが多いため、その実態が分かりにくく、転職のプロセスが不透明で不安を感じることもあるかもしれません。この記事では、スタートアップに関する基本的な知識や、ベンチャーとの違い、スタートアップでの働き方のメリットとデメリット、そしてスタートアップの探し方について詳しく説明します。
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こちらの記事でスタートアップ企業への転職成功のコツについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
スタートアップとは?
スタートアップとは、革新的なアイデアや技術力をを駆使し、短期間で急成長を目指す企業のことです。スタートアップの起業家は様々で、元々大企業で経験を積んだ人から、エンジニア、研究者、教育者、学生など、幅広いバックグラウンドを持つ人がいます。
代表的なスタートアップ企業として、今では世界を代表する大企業となったAmazon、Google、Meta、そして国内ではメルカリなどが挙げられます。
スタートアップの共通点は、既存の大企業が始められないような斬新な事業を、資金不足や事業継続の難しさといったリスクを乗り越えて始めることです。成功すれば、深刻な社会課題の解決や人々の生活の向上など大きな影響を持つことがあります。
そして急速に成長し、IPOや大企業とのM&Aを果たすと、創業メンバーや社員が莫大な報酬を獲得する場合もあります。そのため、スタートアップは転職先としても非常に魅力的といえるでしょう。
一方で、予定通りに事業が進まないことや、事業継続が難しくなり断念せざるを得ないケースも珍しくありません。
スタートアップの業種
スタートアップは特定の業種に限定されるわけではありません。業種は非常に多岐にわたり、主なものは以下があります。
- 情報通信系(IT・ゲームなど)
- 精密・電気機器系
- 医療・ヘルスケア系
- 医薬・創薬系
- 食品系
- 水産・農林系
- 教育系
- 金融・証券系
- 小売・卸業系
- サービス系(ファッション・美容など)
- 人材・採用・転職系
- 建設・不動産系
- インフラ・エネルギー系
- 物流・運輸系
- 法律系
国内のスタートアップの現状
2022年における国内スタートアップの資金調達額は、スタートアップ情報プラットフォーム「INITIAL」の2022年の調査によると、8,774億円で過去最高を記録しました。資金調達を行ったスタートアップの数は、2,224社で、近年の最高であった2018年の2,915社と比べると減少傾向にあります。
企業価値10億ドルを超える非上場企業「ユニコーン」の数は、2022年10月時点で米国646社、中国172社に対して日本はわずか12社にとどまっています。こういった背景から、政府は2022年をスタートアップ元年と位置づけ、岸田首相のリーダーシップのもとで「スタートアップ育成5ヵ年計画」を策定しました。
政府の計画で、将来的にはユニコーン企業を100社、スタートアップを10万社創出するという明確な目標が掲げられており、政府が真剣にスタートアップ育成に取り組む姿勢を示しています。
具体的には、起業文化の向上を図り、スタートアップの成長を後押しするために、以下のエコシステムの構築に国をあげて注力しています。
- 資金供給の強化
- 人材交流の促進
- 出口戦略の多様化
- オープンイノベーションの推進
スタートアップとベンチャーの違い
スタートアップと似た使われ方をする言葉に「ベンチャー」があります。スタートアップが登場する前から使われてきた言葉ですが、両者には明確な違いがあります。それぞれの違いについて詳しく解説しましょう。
スタートアップは、斬新なアイデアや画期的な技術で急激な成長をアグレッシブに目指す企業のことを意味します。短期間で資金調達を行い、事業の方向性を出口戦略として早期に定めて運営していく特徴があります。
一方、ベンチャーは、すでに存在するビジネスモデルを基盤として新たなサービスを提供することを目的とした企業のことです。確実な成長を目指すことを前提としているので、スタートアップに比べると時間をかけて着実に事業規模を拡大していくのが特徴です。
市場に注目される画期的な事業を展開する例もありますが、小規模かつ少ない資金で起業可能なスモールビジネスを手掛けているケースも少なくありません。
こちらの記事でベンチャーへの転職事情、失敗しないための対策について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
スタートアップとスモールビジネスの違い
スタートアップとスモールビジネスは、市場戦略、成長の見通し、資金調達の手段において大きな違いがあります。
スモールビジネスとは、既存の市場で確立されたニーズに応えるビジネスモデルを持っています。具体例として、美容室や飲食店がこのカテゴリに属します。これに対して、スタートアップは、市場がまだ定義されていない、または新しい市場を創出する可能性があるビジネスです。
スモールビジネスは、長期的な成長と安定を目指しており、資金調達も銀行融資が主流です。具体例として、日本の中小企業の約65%が銀行融資を利用していると言われています。一方で、スタートアップは短期間でのイグジット(M&AやIPO)を目指しており、エンジェル投資家やベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達が一般的です。
これらの違いを理解することで、転職活動においてより明確な方向性を持つことが可能です。
スタートアップの5つの特徴
スタートアップの特徴についてさらに詳しく掘り下げましょう。具体的には、以下の5つが挙げられます。
- 革新的なイノベーションの創出
- 急激な成長力
- イグジット戦略を持っている
- 社員にストックアプションを提供することが多い
- 人の出入りが激しい
それぞれの詳細を解説します。
革新的なイノベーションの創出
スタートアップの大きな特徴は、以下のような革新的なイノベーションの創出にあります。
- 従来の規制や常識・法律にとらわれない
- 社会課題に画期的な解決をもたらす
- 人類に多大な利便性をもたらす
従来のやり方では限界がある分野での成長を目指したり、大学をはじめとする研究機関での発見や発明が契機となって立ち上がるケースが多いです。
急激な成長力
短期間で急激な成長を目指すのもスタートアップの特徴です。
資金調達額や事業計画について、半年から1年といった短い期間で具体的な目標を設定し、その達成に向けて限られた人材で集中的に事業の立ち上げ、顧客獲得、サービスの普及などに取り組みます。
イグジット戦略を持っている
スタートアップは、出資者に利益還元するイグジット(出口)戦略を持ち合わせているのが一般的です。具体的には、以下の2つの方法があります。
- IPO(新規株式公開)
- M&A(合併または買収)
IPOは、株式を証券市場に上場することにより、株式を保有している出資者に株式の売却益をもたらす手段です。一方、M&Aは、買収する企業に保有する株式を譲渡することによって出資者に利益をもたらします。
一般的には、3~5年のうちにイグジットを実施する例が多く、比較的短期間で投資を回収できることが投資家を引き付ける要因となっています。
社員にストックオプションを提供することが多い
多くのスタートアップ企業は、社員に対し入社時にあらかじめ定めた価格で自社株が購入できるストックオプションを与えます。これにより、将来その企業が上場し、株価が上昇している局面で権利を行使することにより、決められた額で株式を取得し、売却すれば値上がり益(キャピタルゲイン)が得られます。
ストックオプションも、スタートアップに転職するインセンティブとして注目されています。
人の出入りが激しい
スタートアップは歴史が浅いため、大企業のように働きやすい環境が整っていない場合があります。頻繁な方針の変更や社員同士の意見の食い違いが原因で社員が辞めていくことは珍しくありません。
そのため転職者が多く、上司やパートナーが短期間で交代することもあるかもしれません。
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スタートアップで働くメリット・デメリット
スタートアップで働くメリットとデメリットをまとめました。
メリット | デメリット |
---|---|
企業が成長する様子が目の前で体験できる | 社内の教育体制や福利厚生が不安定な場合がある |
起業のノウハウが身につく | 長時間労働が多い |
世の中に新たな技術やサービスを発信できる | 長期の勤務が難しい場合がある |
多額の報酬を得られる可能性がある | 大企業からの転職では給与が一時的に下がる可能性がある |
年齢や経験を問わずに高評価が得られる | |
意思決定がスピーディーなため仕事がしやすい |
働くスタートアップを探す方法
転職先としてスタートアップを探す方法は、以下の4通りがあります。
- スタートアップに強い転職エージェントを活用する
- 合同説明会に参加する
- 直接問い合わせる
- 知人の紹介してもらう
それぞれの方法の詳細を解説します。
スタートアップに強い転職エージェントを活用する
最もおすすめなのが、スタートアップに強い転職エージェントを活用する方法です。実績があるエージェントなら様々な業種からの募集案件があり、選択肢が多く採用される確率も高まるでしょう。
キャリアカウンセリングの充実や、自分の強みが活かせそうな企業を紹介してもらえるので、あまり迷わずに転職活動できる点も魅力です。
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合同説明会に参加する
スタートアップ企業が多く参加する業界別の合同説明会に参加する方法もあります。業界が定まっていると面接等の対策が立てやすく、転職後のイメージも描きやすいでしょう。
目的の企業とは違う、自分では想像もしなかった技術やサービスを提供している素敵な企業との縁が生まれる可能性もあります。
直接問い合わせる
ネット上で情報を収集して、コーポレートサイトから直接問い合わせてみる方法もあります。多くのスタートアップ企業は、優秀な人材を積極的に求めており、直接の問い合わせにも親切に対応してくれることが一般的です。
気になる企業があれば、遠慮せずに経営者に直接コンタクトしてみることをおすすめします。
知人に紹介してもらう
スタートアップ企業の経営者や社員、あるいはその人たちと知り合いの知人がいれば、そこからの紹介で転職する方法もあります。友人や知人を介した紹介は、転職エージェントなどと比べて簡単には断りにくいものです。
しかし、このアプローチでは信頼性が非常に高いため、表には出ない優良案件である可能性が高いでしょう。
スタートアップでよくある質問まとめ
- スタートアップとは?
-
スタートアップとは、革新的なアイデアや技術力をを駆使し、短期間で急成長を目指す企業のことです。スタートアップの立役者は様々で、元々大企業で経験を積んだ人から、エンジニア、研究者、教育者、学生など、幅広いバックグラウンドを持つ人がいます。代表的なスタートアップ企業として、Amazon、Google、メタ、そして国内ではメルカリなどが挙げられます。詳しくはこちらにジャンプ。
- スタートアップの特徴は?
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スタートアップの特徴は、以下の5つが挙げられます。
- 革新的なイノベーションの創出
- 急激な成長力
- イグジット戦略を持っている
- 社員にストックアプションを提供することが多い
- 人の出入りが激しい
詳しくはこちらにジャンプ。
まとめ
スタートアップは、歴史が浅く将来性が未知数なため、転職を考える際には不安を感じるかもしれません。しかし、これらの企業は急速に成長し、多岐にわたる業務に携われる機会が多いため、好奇心旺盛で向上心を持ち、独自性を発揮したいと考える方や、将来的に起業を志す方にとっては魅力的な選択肢です。
政府によるスタートアップ支援が本格化する2023年からは、今まで以上にスタートアップが数多く誕生し、転職先としての魅力が高まるでしょう。このチャンスを捉えて、積極的に転職に向けて動いてみることをおすすめします。
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