AIやIoTの目覚ましい発展によりビッグデータの存在が一層重要性を増しています。そこで注目されているのが「データサイエンティスト」です。
さまざまな業界で一目を置かれている職種で、成功すればかなりの年収も期待できます。しかしその反面、個人によってレベルには相当の差があるので、信頼されてやり甲斐のある仕事をこなすためには、スキルや資格の習得に努める必要があります。
今回はデータサイエンティストとして年収アップに有利となる資格とその難易度について解説します。資格所得の方法も紹介するので参考にしてください。
こちらの記事でデータサイエンティストとはどんな仕事か、需要・将来性について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
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データサイエンティストに資格は必要?
まず基本的なことですが、データサイエンティストは特定の試験に合格しなければなれない職種ではありません。そのため、弁護士や公認会計士のように「データサイエンティスト試験」といった国家資格はありません。
とはいえ、データサイエンティストと名乗るためには、以下のような知識やスキルが求められます。
- データ統計処理
- 統計と確率
- データベースの専門知識とスキル
- プログラミングの知識とスキル(特にPython)
- ビジネスやマーケティング(利益創出モデル)の知識
- プレゼン力
収集した膨大なデータを基にモデリングをする工程では機械学習や深層学習(ディープラーニング)などのAIを駆使する必要があるでしょう。このような分析過程ではPythonやR言語を用いることが多いです。
こちらの記事でPythonの概要、得意分野、将来性について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
データサイエンティストを目指すなら、これらの知識やスキルを習得するための資格や幅広いジャンルの学習が必要になってきます。特に、独立してフリーランスとして案件を請け負う場合は企業の後ろ盾がない分資格がものを言い、競合に差をつける要素となるでしょう。
こちらの記事でデータサイエンティストがフリーランスとして働くメリット、平均年収について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
データサイエンティストに有利な資格と難易度
それでは早速、データサイエンティストに必要なおすすめの資格とその難易度について解説します。具体的には、以下の9資格になります。
- データサイエンティスト検定
- GCP Professional Data Engineer
- G検定・E資格
- ITパスポート
- 統計検定
- OSS-DB技術者認定試験
- オラクルマスター
- データベーススペシャリスト試験
- 基本情報技術者試験
それぞれの資格について説明します。
データサイエンティスト検定
データサイエンティスト検定(通称DS検定)は、「データサイエンティスト」と付く唯一の資格(民間)になります。データサイエンティスト協会が主催しており、データサイエンティストに必要な「データサイエンス力」「データエンジニアリング力」「ビジネス力」の基礎的な実務力があることが証明できます。
2021年から開始された試験でまだ歴史が浅く、データサイエンティストの育成とその人材を必要とする企業とのマッチングを目的としています。
データサイエンティスト協会は、データサイエンティストに必要なスキルや知識をスキルチェックリスト・タスクリストで定義し、スキルレベルを以下の4段階に分類しています。
見習いレベルの「アシスタント データサイエンティスト」から「シニア データサイエンティスト」まで4段階に分けて定義しています。
多くの方は「アシスタント データサイエンティスト」レベルに向けたリテラシーレベルから始め、以下のような人たちを対象としています。
- データサイエンティスト初学者
- データサイエンティストを目指すビジネスパーソン
- データサイエンティストに興味のある大学生や専門学校生
リテラシーレベルとはいえ試験自体の難易度は決して容易ではありません。試験範囲は以下の3つの領域となります。
領域 | 試験範囲 |
---|---|
データサイエンス力 | 統計数理基礎 線形代数基礎 微分・積分基礎 回帰・分類など |
データエンジニアリング力 | アルゴリズム サンプリング処理 アーキテクチャ設計 ITセキュリティの基礎知識など |
ビジネス力 | ビジネスマインド データ・AI倫理 KPI コンプライアンスなど |
とくに初学者の場合は、1〜2カ月はみっちりと集中して勉強する必要があるでしょう。
データサイエンティスト検定の受験要領
- 年に2〜3回実施
- 全国の試験会場においてCBT形式で実施
- 試験時間:90分
- 問題数:90問
- 受験費用:一般10,000円、学生5,000円
- 合格率:約50〜66%
GCP Professional Data Engineer
データ収集・分析や高度なデータ処理システムの設計、構築および運用などにかかわるGoogle Cloudのプロダクト知識を総合的に問う、Googleが主催している試験です。
Googleが本試験を推奨しているのは、業界経験3年以上とGoogle Cloudの使用歴1年以上の方です。知識目安としては、「応用情報技術者試験」程度のIT知識は必要です。
加えて、以下のようなGoogleが推すサービスに関する使用実績と知識は必要でしょう。
- BigQuery:データウェアハウス
- Cloud SQL:データベース
- Cloud Spanner:データベース
- Bigtable:データベース
- Dataflow:データ処理
- Cloud Composer:ワークフロー
- Cloud Pub/Sub:メッセージング
Google Cloud認定資格の中で最高難度の「プロフェッショナル認定資格」の一つに入っているため、決して簡単とは言えません。しかしそれゆえに、取得できればデータサイエンティストとして大幅なスキルアップが可能となるでしょう。
GCP Professional Data Engineerの受験要領
- 日本語での受験が可能
- 随時受験可能
- 専用の「Webassessorアカウント」が必要
- CBT形式で、場所はテストセンターと自宅などの遠隔監視オンラインから選択
- 120分で50問
- 有効期間は合格した試験日から2年間
- 試験費用:200ドル(約28,800円)
G検定・E資格
G検定もE資格も、一般社団法人ディープラーニング協会(JDLA)が主催する民間資格です。G検定は、エンジニアではなくAI業界を目指すビジネスパーソン向けにディープラーニングの知識を問うものです。
今後のデータサイエンスの世界はAI抜きには考えられないので、AIを基礎から学べるという意味で、データサイエンティストにもおすすめです。JDLA認定プログラムを試験日の過去2年以内に修了している必要があります。
一方、E資格は、エンジニア向けにディープラーニングの知識やスキルを問うもので、G検定よりも踏み込んだ勉強が必要です。よってG検定をパスしてからE検定を受験するのがおすすめです。最低半年の勉強期間は必要と言われています。
G検定の受験要領
- 毎年5回実施
- 120分間で220問
- CBT方式で、インターネットに接続できる端末があればどこでも受験可能
- だれでも受験できる
- E資格より容易な内容
- 合格率は60〜70%前後
- 試験費用:一般13,200円、学生5,000円
E資格の受験要領
- JDLA認定プログラムは7〜80万円で、受講料33,000円も必要
- 毎年2月と8月の2回実施
- 指定された会場でCBT方式にて実施
- 120分で100問程度(試験範囲が頻繁に変更されるので要注意)
- 合格率は65〜75%
- 試験費用:一般33,000円、学生22,000円
- 試験合格から2年間が有効期間
ITパスポート
ITパスポートは、IT関連ではもっとも有名な国家資格試験の一つで、情報処理推進機構(IPA)が主催しています。ITに関する基本的な知識が身につくので、まったくIT系の試験を受けたことがない人にうってつけでしょう。
ITパスポートを入り口として上位資格にステップアップしていく人が多い印象です。関連の仕事に就いている人はもちろんですが、非IT系の受験者も少なくありません。
試験範囲は以下の3つの領域となります。
- ストラテジ系:経営全般 35問前後
- マネジメント系:IT管理 20問前後
- テクノロジ系:IT技術 45問前後
2022年4月より「新しい用語」「プログラミング的な思考力を問われる問題」が追加され、出題範囲が広がりました。合格率は50%台が続いています。
総合評価で1,000点中600点以上、さらに全分野を一定以上理解している必要があり、分野別で1,000点中300点以上をマークする必要があります。難易度はそれほど高くなく、初学でも30〜50時間の勉強でパスすることが可能です。
ITパスポートの受験要領
- 月に2回~毎週間隔の土曜日・日曜日に実施。多い会場で午前・午後・夕方の3回実施
- 試験時間:120分
- 全国の試験会場においてCBT形式で開催
- 試験費用:7,500円
統計検定
一般社団法人日本統計学会が認定し、一般社団法人統計質保証推進協会が実施する検定試験です。データに基づく客観的な判断能力や科学的な問題解決能力を問うもので、データサイエンティストにも求められる大事な要素です。
全部で4級までありますが、内容から考えて2級以上がおすすめです。ちなみに1級のみ「統計数理」と「統計応用」の2種類があります。
1級はかなり難易度が高く、初学の場合は数カ月〜1年くらいの勉強が必要です。準1級も決して簡単とは言えません。2級については80〜150時間くらい集中すればパスできるレベルと言われています。
統計検定の受験要領
- 1級:大学3・4年で統計学を専攻するレベル
- 準1級:大学で一般的に学ぶ統計学のレベル
- 2級:大学1・2年で学ぶ統計学の基礎レベル
- 試験費用:1級 6,000円
準1級 8,000円(学割6,000円)
2級 7,000円(学割6,000円) - 合格率:1級 統計数理 10〜26%、統計応用 15〜26%
準1級 23%前後
2級 34〜40%前後 - 1級のみ筆記試験で年1回11月に実施
- 準1級、2級はCBT形式で随時実施
OSS-DB技術者認定試験
特定非営利活動法人LPI-Japanが認定するIT技術者認定資格で、「Gold」と「Silver」の2種類からなります。いずれも有効期限があり、5年間となっています。
OSS-DBとは、オープンソースデータベースの略で、企業のニーズに応じた適切なデータベースシステムが提案できる人材を育成するための試験です。Goldは、大規模データベースシステムの改善や運用、コンサルティングといった応用的な問題が出題されます。Silverは、小規模データベースシステムの開発、運用などデータベースに関する基本的な問題が出題されます。
- 試験問題:Gold 30問の選択式と入力式で85分、Silver 50問の選択式と入力式で85分
- 合格率(非公開のため推定):Gold 約70%、Silver 合格率約60%
- 随時受付
- 試験費用:ともに15,000円
オラクルマスター
日本オラクル社の「Oracle Database」シリーズを扱うためのスキルを認定することを目的とした民間資格です。データベースには3種類ありますが、オラクル社のそれは、この中でもっとも普及しているRDBです。
この試験では、RDBの管理・運用やそれを操作するのに必要なSQLの知識が問われます。
以下のようにBronzeからPlatinumまで4段階に分かれており、Silver以上は世界基準の資格になります。Bronzeから始まり、下位のグレードをパスしなければ上位の試験は受験できません。全国の会場で随時実施されているので、いつでも申し込むことができます。
Gold以下の3つのグレードは20〜40時間ほどの勉強でパスできるといわれています。ただPlatinumの難易度は突出しており、350時間ほどの勉強が必要とされています。
Bronze(ブロンズ)の受験要領
試験範囲 | Oracle Databaseの基礎 インストールやデータベースの作成など |
問題数 | 70問 |
出題形式 | 選択形式 |
試験時間 | 120分 |
合格基準 | 65% |
試験費用 | 29,400円 |
Silver(シルバー)の受験要領
試験範囲 | ・Oracle Databaseアーキテクチャの理解 ・データベースやインスタンスの管理 ・ユーザー、ロール、権限の管理など |
問題数 | 90問 |
出題形式 | 選択形式 |
試験時間 | 150分 |
合格基準 | 60% |
試験費用 | 29,400円 |
Gold(ゴールド)の受験要領
試験範囲 | ・アプリケーションPDBの管理 ・CDBと通常のPDBの作成 ・CDBよPDBの管理など |
問題数 | 85問 |
出題形式 | 選択形式 |
試験時間 | 150分 |
合格基準 | 57% |
試験費用 | 29,400円 |
Platinum(プラチナ)の受験要領
試験範囲 | ・プラガブル・データベースの作成と管理 ・ネットワーク環境の構成 ・複数のデータベースへの接続など |
出題形式 | 実技試験 |
試験時間 | 2日間 両日とも 9:30〜17:30 |
合格基準 | モジュール1 53.3% モジュール2 34.3% モジュール3 40.7% モジュール4 43.4% ※全モジュールで合格基準をクリアする必要があります |
試験費用 | 198,000円 |
データベーススペシャリスト試験
情報処理推進機構(IPA)が主催するIT系の試験の中で、最難関に当たるレベル4難易度の資格です。IPAは以下のような対象者を想定しているので、データサイエンティストを目指す上で有益でしょう。
高度IT人材として確立した専門分野をもち、データベースに関係する固有技術を活用し、最適な情報システム基盤の企画・要件定義・改発・運用・保守においても中心的な役割を果たすとともに、固有技術の専門家として、情報システムの企画・要件定義。改発・運用・保守への技術支援を行う者
独立行政法人情報処理推進機構「データベーススペシャリスト試験」
データベーススペシャリスト試験の受験要領
- 午前と午後で合計4科目、計300分にわたって実施
午前Ⅰ試験(共通問題):IT産業全般に関する基本的な知識が問われる(四肢択一)50分
午前II試験:データベースを中心とした技術的な問題(四肢択一)40分
午後I試験:実践的な問題(大問3つから2つを選択)90分
午後II試験:実践的な問題(大問2つから1つを選択)120分 - 合格率:約13%〜17%と高難度
- 試験日程:年1回 10月第3日曜日
- 試験費用:7,500円
- 試験会場:全国主要56都市の市内、またはその周辺に設置された会場
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は数十年の歴史をもち、IT技術について基本的な知識とスキルを身につけることを目的としています。先述のITパスポートより難易度が高いので、ITパスポートをパスした後に受験するのがおすすめです。
かつては、合格率が30%に満たないほど難しかったのですが、2023年の新体制になってから合格率が約54〜56%と合格率が跳ね上がりました。
2023年4月より前までは科目A・Bともに150分ずつだったものが大幅に短縮され、問題も大問が小問に変更されるなどして、受験生の負担がかなり軽減されました。また、採点方式や合格基準も直されたため、より合格しやすくなったのです。
しかも申し込みさえすれば随時、受験できるようになり、試験が受けやすくなりました。よって受験するなら今が絶好のチャンスと言えるでしょう。とはいえ初学者の場合は、200時間の勉強が必要と言われているので、決して楽ではありません。
基本情報技術者試験の受験要領
- 科目A 90分 科目B 100分
- 情報処理推進機構(IPA)の認定した講座を受講すると科目Aが1年間免除
- 受験費用:7,500円
- 全国の試験会場においてCBT形式で実施
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データサイエンティスト関連資格取得の方法
データサイエンティストにとって有効な資格を取得するための方法を紹介しましょう。
スクールに通う
時間とお金に余裕がある場合は、スクールに通うのがおすすめです。交通費も含めると出費額が大きくなるかもしれませんが、その分だけ本気度がアップするのは間違いないでしょう。同じ目標に向かって学んでいる人たちが周りにいると、一人で勉強する場合と比べてモチベーションも自然と上がってきます。
特に、未経験で資格を武器にデータサイエンティストになりたい場合はスクールでの資格取得がスピーディでしょう。
疑問点はその場で講師に直接尋ねることができるので、確実に理解することができます。その資格のプロが目の前にいると思うと、何より心強いでしょう。
動画の講座を利用する
多くの資格試験では、対策用の講座が動画で配信されています。時間や経済的な事情で通学できない場合は、場所も時間も関係なく何度でも視聴できる動画で学ぶのがよいでしょう。
ただ独学の場合、どうしても挫折するリスクが高いので、できるだけ短期集中でマスターできるように意識することが大切です。
参考書で独学
参考書を購入して独学する方法もあります。最近は、視覚と聴覚を使いながら学べる動画を選択するケースが多くなっていますが、わからないところや苦手なジャンルを参考書で補うのも有効です。
練習問題や模擬試験が付いているものも多くあるので、実践力を身につけたい場合には便利でしょう。
データサイエンティストでよくある質問まとめ
- データサイエンティストに有利な資格は?
-
データサイエンティストに必要なおすすめの資格は、以下の9資格になります。
- データサイエンティスト検定
- GCP Professional Data Engineer
- G検定・E資格
- ITパスポート
- 統計検定
- OSS-DB技術者認定試験
- オラクルマスター
- データベーススペシャリスト試験
- 基本情報技術者試験
詳しくはこちらにジャンプ。
- 資格取得の方法は?
-
データサイエンティストの資格を取得するための方法は以下があります。
- スクールに通う
- 動画の講座を利用する
- 参考書で学ぶ
詳しくはこちらにジャンプ。
まとめ
データサイエンティストは、国家資格が存在しないため、ここまでクリアすれば問題ないという明確な基準がありませんそのため成否は、自分がどれだけ学習していけるかにかかっています。
近年は、ほぼすべての業界でビックデータを駆使したマーケティングや新規事業の立ち上げが常識化しています。その意味で、データサイエンティストの役割は大きいでしょう。
一流として認められるまでには相当の努力が必要です。しかし、スキルを習得すれば大きな活躍の場を得られるチャンスがあるでしょう。そう考えると、今が資格取得の絶好のチャンスです。
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