一般的なITエンジニアに比べると高収入と言われるデータサイエンティスト。しかし現実には、同じデータサイエンティストでも年収に大きな開きがあります。その理由はどこにあるのでしょうか。
今回は、データサイエンティストの年収に差が出る理由や年収を決定づける4つのスキルレベル、さらに年収をアップさせるキャリアパスと具体策について詳しく解説します。
これから活躍の場を広げて年収をアップさせたいデータサイエンティストの皆さんは、ぜひ参考にしてください。
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データサイエンティストの年収はなぜ差が出るのか?
データサイエンティストの稼ぎの差、年収の差はデータサイエンス力やデータエンジニアリング力、ビジネス力といったスキルレベルの違いによります。
こちらの記事でデータサイエンティストの仕事内容、年収相場について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
第一に、データサイエンティストのスキルレベルによって年収に大きな開きが生じます。例えば、統計学、機械学習、プログラミング言語(Python、R等)に精通し、ビッグデータを扱った実務経験が豊富なシニアレベルのデータサイエンティストは、年収1000万円以上の高給を得られるケースが多いです。
一方、スキルや経験が浅いジュニアレベルだと、年収400〜600万円程度にとどまることが一般的です。
第二に、業界や企業規模によってデータサイエンティストの需要と供給のバランスが異なり、それが年収に影響します。金融業界やIT業界など、データ活用ニーズの高い業界では高年収のポジションが多数あります。また、自社の競争力を高める重要な戦力と位置付け、好条件での採用に積極的なケースが目立ちます。
こちらの記事でデータサイエンティストの転職需要が大きい企業や業界について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
第三に、職務内容や役割の違いも年収差の要因となり得ます。データサイエンティストの中でも、事業の意思決定に直結するデータ分析を行う管理職クラスともなれば、年収は1500万円を優に超えるケースがあります。一方、アシスタント的な立ち位置のデータサイエンティストは、相対的に年収が低くなる傾向があります。
データサイエンティストの年収を決める4つのスキルレベル
データサイエンティストの年収を決める要因として、一般社団法人データサイエンティスト協会が定める4つのスキルレベルが非常に参考になります。
ここで掲げられている具体的な要素を満たすことができれば、自ずとデータサイエンティストとしての実力が向上し、それにともなって好条件で仕事ができると期待してよいでしょう。
- Assistant Data Scientist(見習いレベル)
- Associate Data Scientist(独り立ちレベル)
- Full Data Scientist(棟梁レベル)
- Senior Data Scientist(業界を代表するレベル)
各レベルについて具体的に解説しましょう。
Assistant Data Scientist(見習いレベル)
データサイエンティスト協会のスキルチェックリストで、データサイエンス力(全309項目)・データエンジ二アリング力(全182項目)・ビジネス力(全159項目)で★(一つ星)が付いている項目の70%以上を満たすと、「Assistant Data Scientist(見習いレベル)」となります。
文字通り「見習いレベル」で、データサイエンティストとして間もない方や、年収が上がらないという方は、このレベルで止まっている可能性が高いです。自身で指示を出すというより、上役から指示を受けて業務をこなすのが主となります。
Associate Data Scientist(独り立ちレベル)
スキルチェックリストの★★(二つ星)の項目を60%以上満たすと「Associate Data Scientist(独り立ちレベル)」となります。
このレベルになると、一つのプロジェクトを担当できるようになります。指示を受けて動く「見習いレベル」ではなく、プロジェクト成功のために必要なすべての業務と要素について責任を負います。
Full Data Scientist(棟梁レベル)
スキルチェックリスト★★★(三つ星)の項目を50%以上満たすと「Full Data Scientist(棟梁レベル)」となります。
このレベルになると、複数のプロジェクトを連携させたり、統合したりして企業や関連企業全体の目標達成を目指すリーダー的な役割が果たせるようになります。
かなりハイレベルなデータリテラシーや問題解決力、データをビジネスに落とし込む力などを持つため、大手企業でも限られた存在となり年収も大幅にアップするでしょう。
Senior Data Scientist(業界を代表するレベル)
Senior Data Scientist(業界を代表するレベル)は★★★★(四つ星)レベルですが、チェックリストには三つ星までしかありません。つまり、チェックリストのすべてを網羅できる超越的なレベルといってよいでしょう。
一企業の枠を超えて、複合的な事業体や産業領域全体をまとめたり、牽引したりできる稀有な存在です。もちろん年収も大幅アップが期待できるでしょう。
データサイエンティストが年収をアップさせるキャリアパス
続いては、データサイエンティストが年収をアップさせるキャリアパスを見ていきましょう。
- 昇格を目指す
- 外資系企業に転職する
- 成長企業へ転職
- スキルを活かした副業
- フリーランスになる
昇格を目指す
現在すでにデータサイエンティストとして働いている場合は、その企業内で昇格を目指すのがもっとも現実的な年収アップのキャリアパスといえるでしょう。
具体的には、社内で求められる役割を見定め、上記の「見習いレベル」から「独り立ちレベルに」ステップアップできるように努めることです。単なるデータ収集や分析の域を脱し、経営課題の特定や戦略立案、上司やクライアント要望、あるいは会社が目指す方向性を先回りして意思決定をサポートできるようになると、確実に評価が高まるでしょう。
外資系企業に転職する
外資系企業への転職もデータサイエンティストのキャリアパスとしておすすめです。
とくに欧米の外資系は、自国に比べて日本の給与水準が低いことをよく理解しています。その一方で優秀なエンジニアがいることも分かっているため、平均よりも高い報酬で採用するケースが珍しくありません。
厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」によると、データサイエンティストの令和4年全国平均年収は557.5万円です。一方、Glassdoor社の「The Best Jobs in America 2022」によると、アメリカのデータサイエンティストの平均年収は12万ドルで、円換算すると約1840万円(2024年4月現在1ドル=154円で試算)と日本の実に3倍以上となっています。
海外進出を考えるのも一つの手です。データサイエンティストの仕事は、環境さえ整えばリモートでも可能なため、実際には海外に渡らずに国内で仕事を行える可能性もあります。
その場合でも、いきなり縁もゆかりもない企業に挑むより、現在の仕事で外資系企業とのプロジェクトを成功させてスカウトされるとか、海外に渡った知人に紹介してもらうといったパターンの方が現実的でしょう。
高いスキルと英語力が求められますが、上手くいけば年収アップだけでなく、活躍の場も広がると期待できるでしょう。
成長企業へ転職
年収アップを実現するには、戦略的に転職活動を行うことが肝心です。企業の採用計画や事業戦略を分析し、データサイエンティストを必要としている成長企業をリストアップしましょう。
また、キャリアの棚卸しを行い、強みを最大限アピールできる企業を選ぶことも大切です。
転職エージェントを活用すれば、幅広い求人情報を得られるだけでなく、入社後の年収交渉までサポートしてもらえます。実際に、転職エージェントを利用して年収が100万円以上アップしたデータサイエンティストは数多くいます。
スキルを活かした副業
データサイエンティストが年収を上げる有力な方法の一つに、高いスキルを活かした副業があります。
まず、データサイエンティストは、統計分析、機械学習、データ可視化など、他の職種に比べて専門性の高いスキルを持っています。これらのスキルは、様々な業界で需要が高まっており、副業で活躍の場を広げるチャンスが豊富にあります。例えば、スタートアップ企業の事業戦略策定のための市場分析や、中小企業のマーケティング効果測定など、データサイエンスのスキルを必要とするプロジェクトは数多くあります。
また、副業では自分の得意分野に特化したサービスを提供することができます。例えば、不動産業界に精通しているデータサイエンティストであれば、不動産価格の予測モデル開発に特化したコンサルティングサービスを提供することで、高い報酬を得ることが可能です。このように、専門性を武器にニッチな領域で価値を提供することが、副業での年収アップの鍵となります。
こちらの記事でデータサイエンティストが副業案件で稼ぐ方法とメリットについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
フリーランスになる
「独り立ちレベル」以上のスキルが身についたら、フリーランスになる選択肢もあります。
ただし、いきなりフリーランスになっても信頼がなければ、そう簡単に条件の良い仕事は来ないのでもらえません。年収アップを望むなら、ある程度の実績と信用を積んでから独立するのがおすすめです。
そしてどのような仕事が受注できるのか、ポートフォリオとして明確に示せるようにすることが肝要です。
こちらの記事でフリーランスのデータサイエンティストになるメリットについて詳しく解説していますので併せてご覧ください。
データサイエンティストの年収アップ実践ステップ
続いてデータサイエンティストが年収をアップさせるための具体的な対策を紹介します。
- 自分のスキルレベルを把握する
- データサイエンス力を磨く
- データエンジニア力を磨く
- ビジネス力を磨く
自分のスキルレベルを把握する
まず、先に紹介したデータサイエンティスト協会のスキルチェックリストと自身の実力を照らし合わせて、現実的なスキルレベルを把握することが大切です。見習いレベルの方は、まずそこをクリアして「独り立ちレベル」を目指すのがよいでしょう。
他にも、Kaggleコンペティションで上位入賞経験があったり、ビッグデータを活用した事業貢献の実績があったりすると、年収交渉で有利になります。
こちらの記事でデータサイエンティストにおすすめの資格について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
「データサイエンス力」「データエンジニア力」「ビジネス力」の3本柱を総合的に向上させることが不可欠です。外資系や海外進出を目指すなら同時に語学力を伸ばすことも忘れてはなりません。自己分析を行い、客観的な市場価値を見定めましょう。
データサイエンス力を磨く
年収アップに欠かせない一つが、以下のような「データサイエンス力」です。
- データリテラシー
- プログラミングスキル
- データクレンジングやモデル構築力といった情報処理
- 統計学
デジタル技術の進化によって、データサイエンス領域に求められるスキルセットは常に変化しています。例えば、近年はディープラーニングやそれを支えるフレームワーク(TensorFlow、PyTorch等)への注目度が高まっています。こうした最新トレンドを学び、実践的なスキルを身に付けることが、高年収ポジションへの近道となるでしょう。
社外のセミナーに参加したり、オンライン学習プラットフォームを活用したりするのも効果的な方法です。
データエンジニアリング力を磨く
データサイエンスを実際のビジネスで意味のある内容に落とし込んでいくのが、データエンジニアリング力です。優れた分析モデルを構築できたとしても、それを実際のシステムに実装し、安定的に運用できなければ、ビジネスインパクトは限定的なものになってしまいます。データエンジニアリングが企業の稼ぐ力になるので、データエンジニアリングの高さは、報酬アップに直結すると期待できます。
まず、ビッグデータを収集・加工・分析するためのデータパイプラインを設計・構築する力を養うことが重要です。以下のような代表的なビッグデータ処理のためのツールやクラウドサービスの使い方を習得しましょう。
- Apache Hadoop
- Apache Spark
- Amazon S3
- Google BigQuery
また、機械学習モデルをAPIとして実装し、運用環境に組み込む力も必要です。そのためには、API開発フレームワーク(FastAPI、Flaskなど)の使い方を理解し、コンテナ技術(Docker、Kubernetesなど)も習得すると良いでしょう。
目的を達成するためのデータの収集や加工、取得方法の提案、データベースやSQLの知見、さらにセキュリティにいたるまで実用性に富んだパフォーマンスを向上させることが肝要です。
ビジネス力を磨く
エンジニアは、ややもすると理屈やテクニカルな知識に偏りすぎるあまりにマーケティングに疎くなるケースがあります。しかしそれでは、ビジネスの世界で必要とされなくなり、年収アップも遠のくでしょう。
そこで、クライアントの課題や業界事情を理解したり、説得力のあるデータに裏打ちされたビジネス的な価値を、現実に即した形で言語化、プレゼンしたりするビジネス力が求められます。これは上記の「データエンジニアリング力」とも密接に関わる非常に重要度の高いファクターとなります。
データサイエンティストの年収でよくある質問まとめ
- データサイエンティストの年収に差が出るのはなぜですか?
-
データサイエンティストのスキルレベルの違い、業界や企業規模による需給バランスの差異、職務内容や役割の大きさによって年収に開きが生じるためです。
- データサイエンティストの年収アップに有効なキャリアパスは何ですか?
-
現在の企業内での昇格、外資系企業や成長企業への転職、一定の実績を積んでからのフリーランス化が有力な選択肢となります。
- データサイエンティストが年収アップのために磨くべき3つのスキルは何ですか?
-
統計学や機械学習等のデータサイエンス力、データ基盤の設計・構築等のデータエンジニアリング力、課題解決のためのデータ活用を提案できるビジネス力の3つを高めることが重要です。
まとめ
データサイエンティストは、目標を定めて確実に対策を行えば、年収アップは十分に可能となります。
そのためには、スキルチェックリストをもとに、自身に何が不足しているのか、どこを強化すれば武器となるのかといったことを明確にしてスキルアップする必要があります。データエンジニアとしての実力を高めることは、キャリアの選択肢を大きく広げてくれます。高度なデータ活用に挑戦したい企業から引く手あまたになることは間違いありません。
データサイエンティストは、今後もあらゆる業界で今まで以上に必要とされるので、積極的かつ戦略的に対策を施せば奏功するに違いありません。ぜひ希望を持って頑張ってください。
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