近年の世界的なAI需要の急速な高まりにより、AIエンジニアの年収が上昇傾向にあります。AIエンジニアとして活躍するには、かなりの学習や経験が必要なため、簡単に稼げるわけではありません。しかし計画的に対策を進めれば、高収入を得ることは十分に可能です。
今回は、AIエンジニアの年収についての特集です。AIエンジニアの年収が他のエンジニアに比べて高い理由や、年収の特徴と傾向、さらに年収を増やす方法やそのための必要スキルについて詳しく解説します。これからAIエンジニアを目指す方や、すでにAIエンジニアとして働いている方もぜひ参考にしてください。
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こちらの記事でAIエンジニアの仕事内容、将来性について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
AIエンジニアの年収が高い理由
まずAIエンジニアの年収が高い理由について解説しましょう。
AI市場が熱い
AIエンジニアの年収が高い理由として、AI市場が世界的に沸騰している点が挙げられます。とくに2023年は生成AIの登場により、さまざまなテクノロジーの中でAIが大きく注目されました。
IT専門調査会社IDC Japanの調査では、2023年の国内AIシステムの市場規模は6,858億7,300万円で、前年比成長率が34.5%となりました。さらに、2023年~2028年の年間平均成長率は30.0%で推移し、2028年には2兆5,433億6,200万円になると予測しています。
この目覚ましい勢いを支えている立役者がAIエンジニアに他なりません。ソフトウェア、ハードウェア、AIサービスなどを手掛けるAI関連企業の間では、熾烈なシェア競争に勝ち抜くために優秀なAIエンジニアの争奪戦が展開されています。そのため、AIエンジニアの年収は高騰しているのです。
AIエンジニアの絶対数が足りていない
AIが注目されるようになったのはごく最近のことです。したがって、AIテクノロジーに精通したAIエンジニアの数は限られています。これもAIエンジニアの年収が高い要因となっています。
AIエンジニアは、他の多くのITエンジニアとは異なり、単にプログラミングスキルがあれば務まるというものでもありません。統計学やデータサイエンス、機械学習、ディープラーニングといったプログラミング以外の知識にも精通しなければなりません。
AIエンジニアとして即戦力になるには年月と経験が求められるため、自社の目的に叶う人物を見つけ出すのはそう簡単ではないのです。その希少性ゆえ、AIエンジニアは他のエンジニアに比べて年収が高くなる傾向にあります。
AIエンジニアの年収の特徴と傾向
AIエンジニアの年収の特徴と傾向についてさらに詳しく見ていきましょう。
国内の年収は高騰している
先ほども述べたように国内のAIエンジニアの年収は、確実に上昇傾向にあります。厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」によると、2023年(令和5年)全国平均年収で558.3万円と高レベルです。
国税庁が公表している「令和3年民間給与実態調査」によれば2021年の日本の平均年収は約443万円となっているため、その高さがうかがい知れます。しかも558.3万円というのは、経済産業省が策定したITスキル標準であるITSSレベル1程度に過ぎません。ITSSレベル5以上ともなると900万円〜1,000万円超も珍しくありません。
AIエンジニアといっても、その役割や仕事内容はさまざまです。なかでも開発を取り仕切るPM(プロジェクトマネージャー)ともなるとITSSレベル5以上になるため、年収1,000万円超も夢ではありません。
生成AIが本格的に普及し始めたのが令和5年の春頃のため、上記の平均年収はさらにアップしていると考えてよいでしょう。AIに関する法整備や倫理的スキームの確立はテクノロジーの凄まじい発展に追いついていませんが、それをよそに官民を問わずAI頼みの新商品開発やサービス提供がトレンド化している状況です。この傾向を背景として、AIエンジニアは数あるエンジニアの中でも主役級の注目を浴びているのです。
海外では3,000万円超も珍しくない
AI開発は国内よりも海外勢が牽引している状態です。そのため、とくにAI開発トップのアメリカではAIエンジニアの年収が極めて高く、3,000万円超も決して珍しくありません。アメリカのsalary.comでは、AIエンジニアのマネージャークラスの平均年収は188,233ドル(1ドル150円換算で約2823万円)となっています。中には億単位の高収入を稼ぐ例もあります。
AIエンジニアが年収を増やす5つの方法
ここからは、AIエンジニアが年収を増やす方法について解説します。具体的には、以下の5つになります。
- 経験と実績を積む
- KaggleやAtCorderに参加する
- 資格を取得する
- 大企業や外資系企業に転職する
- フリーランスになる
経験と実績を積む
AI開発では、経験と実績が大きく物を言います。品質の高いAIプロダクトは、入念かつ正確なデータ収集とデータ処理なくして開発できません。膨大なデータから何をどのような基準で取捨選択するのかが、成否を分けるといっても過言ではないでしょう。
特に、ニューラルネットワークの設計やハイパーパラメータの最適化など、高度な技術を要する分野では、実践的な経験が不可欠です。これらの実績は、年収交渉時の強力な武器となります。AIプロジェクトの実装経験を持つエンジニアは、そうでない者と比較して高い評価を得やすい傾向にあります。
しかしその技術やセンスを一朝一夕で身につけることは不可能です。トライ&エラーを繰り返し、さまざまな経験を経てこそといえるでしょう。そのため、豊富な開発実績やポートフォリオがあるAIエンジニアは重宝され、年収も高くなるのです。
KaggleやAtCoderに参加する
KaggleやAtCoderなどのコンペティションプラットフォームへの積極的な参加が効果的です。
Kaggleは、機械学習やデータサイエンスにおいてエンジニアと企業・政府・大学などをマッチングさせるプラットフォームです。さまざまな開発課題に関するモデルやコードが無料公開されており、コンペにも参加できるので最新技術やトレンドにキャッチアップしやすくなるでしょう。
Kaggleでは、グローバルランキングシステムが採用されており、トップ1%に入ると「Kaggle Grandmaster」の称号を獲得できます。また、GoogleやMicrosoftなどの大手テック企業のリクルーターが注目しているため、キャリアアップの機会にもつながります。
AtCorderは、世界最高レベルの競技プログラミング開催サイトです。ここに参加してAIに関するコーディング技術を磨いて力をつけるのも、年収アップにおすすめです。
資格を取得する
AIエンジニアとして価値を高めるためには、資格を取得するのも有効です。資格があれば、転職の際に自身のスキルレベルを客観的に証明しやすくなります。企業内でも重要度の高いプロジェクトにアサインされる可能性が高まるので、実績を上げると年収アップにつながるでしょう。
日本ディープラーニング協会のG検定やE検定、AIソリューションを牽引するAmazonやMicrosoftが主催のAIエンジニア向け資格や、プログラミングではPython、統計検定などもおすすめです。
こちらの記事でAIエンジニアにおすすめの資格について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
大企業や外資系企業に転職する
大企業や外資系企業に転職する方法もあります。大企業は手掛けるプロジェクトの規模と予算が大きく、それが給与にも反映されます。Google DeepMindやOpenAI、NVIDIAなどの大手テクノロジー企業や先進的なAIスタートアップは、高給与とキャリア成長の機会を提供する傾向にあります。
これらの企業では、AlphaGoやGPT-4などの革新的なAIプロジェクトに携わる機会が多く、それに伴い報酬も相応に設定されていることが多いです。外資系は国内企業に比べるとAIエンジニアへの評価が高い傾向にあるため、年収アップが期待できます。
フリーランスになる
フリーランスのAIエンジニアは月収が60〜80万円が相場です。年収に換算すると、720〜960万円になります。高度なAI専門知識を持つフリーランスエンジニアは、柔軟な働き方と高収入を実現できる可能性があります。中級者で月収60〜80万円、上級者で月収100〜150万円、トップレベルになると月収200万円以上の収入を得られることもあります。
ただしフリーランスの場合は、報酬の中から経費や税金、年金、生活費などをすべてまかなうことになるため、手元に残る金額は異なります。仕事も自分で取り続けなければならないので、そのあたりのことも考慮して独立するかどうかを決める必要があるでしょう。
AIエンジニアが年収アップに必要な5つのスキル
AIエンジニアが年収を増やすために必要なスキルについて解説します。
- 高度なプログラミングスキル
- データ処理と解析スキル
- プロンプトエンジニアスキル
- コミュニケーションスキル
- 語学
高度なプログラミングスキル
とくにAIサービスの開発と実装を行うなら、高度なプログラミングスキルが求められます。特にPythonの熟練度は、AIエンジニアの市場価値を大きく左右します。Pythonは機械学習やデータ分析に広く使用されており、NumPy、Pandas、Scipyなどのライブラリに精通していることが重要です。
さらに、TensorFlowやPyTorch、Kerasといった深層学習フレームワークの深い理解も求められます。これらのフレームワークを駆使して、複雑な神経回路網を設計・実装できる能力は、高給のAIエンジニア職に就くための大きな武器となります。
データ処理と解析のスキル
AI開発をデータサイエンスの方面から支えるには、データ処理や解析のスキルが大変重要になります。ビッグデータから有意義な洞察を導き出す能力は非常に価値があります。
具体的には、SQL、NoSQLデータベースの操作、データクレンジング、特徴量エンジニアリング、統計分析などのスキルが求められます。例えば、A/Bテストの設計と解釈、時系列分析、異常検知などの高度な分析手法を理解し、適用できることが、データサイエンティストとしての価値を高めます。また、Apache SparkやHadoopなどの分散処理フレームワークの知識も、大規模データ処理において重宝されます。
プロンプトエンジニアリングスキル
生成AIを高度に活用するには、プロンプトエンジニアリングスキルが必須になります。AGPT-3やCLAUDE-2などの大規模言語モデル(LLM)を効果的に活用するには、適切なプロンプト設計が鍵となります。
プロンプトエンジニアは、AIの出力を最適化し、特定のタスクや業界に特化したAIソリューションを開発します。例えば、法律文書の要約や医療診断支援など、専門分野でのAI活用において、プロンプトエンジニアリングスキルは極めて重要です。このスキルを持つエンジニアは、AI企業やスタートアップで高い需要があり、それに応じた報酬が期待できます。
こちらの記事でプロンプトエンジニアの仕事内容、将来性について詳しく解説していますので併せてご覧ください。
コミュニケーションスキル
PMなど、AIエンジニアとして高い地位で活躍しようと思えばコミュニケーションスキルも非常に重要です。技術的な複雑さを非技術者にも分かりやすく説明する能力や、チーム内外での効果的なコラボレーションスキルは、リーダーシップ職への昇進や高額プロジェクトの獲得に直結します。
具体的には、プレゼンテーション能力、ステークホルダーマネジメント、プロジェクト管理スキルなどが含まれます。例えば、AIプロジェクトの成果を経営陣に説得力のある形で提示できれば、より大規模な予算や責任ある立場を任されやすくなります。
語学
AIエンジニアとして活躍の場を広げ、高い年収を得るには、語学、中でも英語力をアップさせることも有効です。AIの分野では、最新の研究論文や技術ドキュメントの多くが英語で発表されます。英語で書かれた技術文書を迅速に理解し、国際会議で自身の研究や開発成果を発表できる能力は、グローバルな舞台での活躍につながります。
例えば、NeurIPS、ICML、CVPRといった著名な国際会議での発表経験は、AIエンジニアとしての評価を大きく高めます。また、多国籍チームでの協働や海外クライアントとの交渉においても、高い英語力は大きな武器となります。
まとめ
AIエンジニアは、今後ますます活躍の場が広がると予測できるため、的をいた対策をしていけば年収を増やせる可能性が十分にあります。
単にプログラミングを学習するにとどまらず、最新のテクノロジーにキャッチアップし、コンペに参加したり、国内外のエンジニアとの交流の場を大事にしたり、英語によるコミュニケーション能力を身につけたりといった積極的かつ開放的なアクションを起こすことが大切です。
AIエンジニアは将来的に大きな可能性を秘めた夢のもてる職種です。ぜひ今からでも準備に取りかかり、先で大いに活躍してください。
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